研究概要 |
塩化物イオン量の分布を推定するためには,表面塩化物イオン量及びコンクリートの拡散係数を求める必要がある。表面塩化物イオン量の測定方法は,分光分析方などいくつかの手法が提案されている。また,コンクリートの拡散係数を既往の研究など引用すれば,電磁波による鉄筋位置までの平均塩化物量と等価な面積となるように塩分量の分布を求めることができ,鉄筋位置での塩化物イオン量を推定することが可能となる。これらを検証するために,室内及び実構造物での測定とコア採取による塩分量分析結果との比較検討を行った。 次に,中性化や凍害をほとんど受けていない構造物であれば,上記の手法での推定方法が可能であるが,中性化やコンクリート表層部の溶脱があるような複合劣化を生じている部材の場合には,電磁波による推定曲線と実際の塩化物イオン量とに大きな乖離を示すこととなる。例えば,ある海岸構造物での塩化物イオン量の分析結果と電磁波による推定結果を比較した場合,両者には大きな差異が生じる場合がある。また,中性化がそれほど進行していないにも関わらず,塩化物イオン量の最大値はコンクリート内部に大きく移動していることがある。このような塩化物イオン量の変化が何に起因しているのか明らかとするために,採取したコアの各深さでスライスした試験体から,数カ所からサンプルを採取し,ポロシメータを用いて細孔構造を調査した。さらに,施工条件,環境条件(波浪,風速,温度,湿度など)及び経過年数などとの関連性を調査した。調査対象は,25年度は沖縄2箇所,九州2箇所,関東地区1箇所で行い,調査個所内においても上記の条件,特に経過年数の異なる箇所からできるだけ多くのサンプルを採取し,検討を行った。
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