研究実績の概要 |
コンクリートの劣化現象であるアルカリシリカ反応は1983年に社会問題となり、その後1988年に当時の建設省から抑制対策が制定された。しかし現在においても新設構造物の反応事例が報告され、コンクリート材料としての耐久性の大きな課題となっている。現在、実施されている抑制対策は、①コンクリートの全アルカリ量をNa2O等価量で3kg/m3以下とすること、②抑制効果のある混和材を用いること、③反応しない骨材を用いるの3点である。これに対して、①の対策を実施したにもかかわらず反応が確認されていること、②の対策は混和材の利用や施工に問題があること、③の対策に対しては使用実績のある良質な骨材が枯渇していることが問題として挙げられている。このようなことから反応性骨材であっても使用可能な容易な抑制方法の開発が望まれている。これに対して抑制効果がみられる薬品を少量添加する方法で検討し、その内、プロピオン酸カルシウムを少量添加する方法で長期にわたって抑制効果が継続することがこれまでの研究で明らかになった。 本研究では、さらに塩水や高アルカリ溶液などに浸漬した場合や、高温などの過酷な条件においても抑制効果が継続するかを検討した。実験では供試体を作製して40℃のNaCl飽和溶液とNaOHの1mol/l溶液に浸漬した場合と、40,60及び80℃で貯蔵した場合の膨張率測定を行った。 結果では、いずれの溶液浸漬においてもプロピオン酸カルシウム添加によって膨張率が抑制されていた。また、貯蔵温度が高いほど抑制効果が低下する傾向が確認されたが、その程度は僅かであった。以上からプロピオン酸カルシウムは過酷な環境下においてもアルカリシリカ反応を抑制する効果があること明らかにした。今後はさらに多種の骨材で長期の抑制効果を検証をするとともに、メカニズムの解明と実施工方法等の検討を実施することが必要と思われる。
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