研究課題/領域番号 |
25420467
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
石川 靖晃 名城大学, 理工学部, 教授 (00257651)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パイプクーリング / 節点水頭法 / 乾燥収縮ひび割れ / メニスカス / 格子等価連続体モデル / Solidification Concept |
研究概要 |
・任意のパイプレイアウトが可能なパイプクーリング解析手法の構築 パイプクーリングを考慮した解析手法の基礎理論は、熱伝導方程式およびパイプ内水温の熱収支の釣合条件式を基にしており、これらの理論は既に確立されている。一方、従来のFEM解析では、コンクリート要素稜線上にパイプ要素を配置する必要があることやパイプ要素は管網配置ではなく一本続きである必要があった。本年度においては、パイプ要素に対する数値積分を見直すことや、水理の分野では有名である管網解析手法(節点水頭法)を従来の理論に導入することにより、管網配置を含めた任意のパイプレイアウトが可能な温度解析手法を確立し、その解析コードを開発した。このことより、パイプクーリングの影響に対する解析検討を、より簡単に実施できることが可能となった。 ・若材齢コンクリートの乾燥収縮ひび割れ挙動の評価 乾燥収縮による劣化の影響を応力解析に導入する場合、コンクリート部材内部の水分状態を把握したうえで自由乾燥収縮ひずみ成分を評価する必要がある。従来の研究成果の範囲では、乾燥収縮ひび割れ解析を行った際、若材齢からコンクリート表面部にひび割れが生じる解析解の傾向となり、実態と大きく異なっていた。若材齢では、コンクリート空隙内のメニスカスが材齢により変化するが、本年度においては、コンクリートのメニスカスの材齢変化を乾燥収縮ひずみ成分に反映させた数理モデルを構築し、非線形応力解析コードの開発を行った。なお、構成則は、Solidification Conceptを考慮した格子等価連続体モデルを使用している。拘束ひび割れ試験と比較検証した結果、本提案モデルは、従来のものと比べ乾燥収縮ひび割れ挙動をより正確に表現することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、膨張材料の温度・湿気移動を考慮した初期応力解析codeの開発を行うことおよび膨張材料の化学エネルギーに関する調査を実施することを目標とした。初期応力解析コードについては、検討するべき課題はいくつかあるが概ね達成できたと思われる。初期応力解析コードは、温度解析コード、湿気移動解析コードおよびひび割れ応力解析コードの3つにて構成される。温度解析コードについては、前述の研究成果で述べたように、パイプクーリングの効果も検討可能な、かつより強化された温度解析コードを開発した。湿気移動解析コードは、現在の段階では、従来の線形拡散理論に基づいており、十分であるとは言い難い。今後強化していく必要があると考える。応力解析コードについては、研究成果で述べたように、乾燥収縮ひずみ成分が改良されていることに加え、Aging効果とひずみ軟化を的確に考慮することができる構成則モデルが導入された解析コードが開発された。さらには、既往の研究で確立された総エネルギー一定則も導入されている。 膨張材料の化学エネルギーに関する調査については、MgOが混入されたセメント材料の化学エネルギーについてのデータをわずかに収集できた程度である。
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今後の研究の推進方策 |
現段階で、乾燥収縮などの体積変化による損傷を評価するための解析ツールの開発はおおむね完成したが、今後は、このような初期損傷に加え、外荷重による損傷を受ける問題いわゆる複合劣化問題を評価する解析手法の確立を目指す。その際、最低限でも部材レベルでの検証が必要不可欠である。具体的には、乾燥収縮などによる初期損傷を部材レベルで計測し、同時に、その状態から載荷試験を実施することで検証のベンチマークとなるデータを得たいと考えている。そして、開発した解析コードを用いて、実験結果に対するシミュレーションを実施し、解析コードの検証を実施したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
化学エネルギーに関する調査に要した費用が、当初の予定よりも少なくて済んだことに加え、実測に基づき開発した解析コードの検証を行うことが当初の目的達成に、より必要であると考えたため。劣化したRC部材に対する耐荷力試験結果を用いて解析プログラムの検証を実施する予定である。 化学エネルギーに関する調査に使用する代わりに、劣化したRC部材の耐荷力試験実施のための費用に充当させたいと考えている。具体的には、RC試験体の型枠・材料費およびひずみゲージなどの計測器などの消耗品である。
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