研究課題/領域番号 |
25420473
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
蟹江 俊仁 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10332470)
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研究分担者 |
佐藤 太裕 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00344482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複合構造 / 弾塑性挙動評価 / 凍結砂 / ファイバーモデル / 製造管理 |
研究実績の概要 |
中詰材料として乾燥砂を入れたケースについては、パイプ材料の応力・ひずみ関係には素材実験から得られたTri-Linear型モデルを当てはめ、内管と外管との相互作用にはWinklerバネを挿入してファイバーモデルを適用することで、その曲げ変形挙動が適切に評価できることを確認した。この結果を受けて、中詰材料をほぼ飽和させ凍結させた時の挙動評価モデルを開発し、凍結砂の圧縮側・引張側双方の応力・ひずみ関係を導入することで、曲げ曲率の小さな弾性状態から、極めて曲げ曲率の大きい塑性領域まで、一貫した曲げ変形挙動モデルの構築に成功した。この研究成果は国内学会ならびに海外学会に論文として投稿を行い、予定通りの成果が概ね挙げられたと考える。 また、製造と管理についても、中詰に含有される水分を完全飽和状態よりやや低い飽和度95%程度に抑えることで、水分の凍結による膨張ひずみの影響を抑制できることが判明し、大きな成果が得られたと考える。 ただし、曲げ挙動実験を行った結果、凍結砂を用いた場合は想定を超える曲げ曲率まで到達し、計測装置の盛り替えも含め、1ケースあたりの実験時間が相当に長くなることとなった。このため、当初予定した数量の実験ケースが完了できない原因ともなっている。また、大変形を計測するための計測装置や方法論についての検討も必要となったため、やや進捗に後れをとっている。 これらについては次年度に持ち越して実施し、当初計画案に近い状態に回復させる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究において、乾燥砂、モルタル、凍結砂といった様々な中詰材料を用いた場合の弾塑性挙動評価モデルが確立されており、中詰材料の違いによる変形特性を確認し、その挙動評価モデルを構築するという点では、概ね順調に推移してきたと考える。また、製造・管理上問題となる含有水の膨張制御についても飽和度をコントロールすることで適切に作成できることがわかっている。 しかし、塑性領域に入ってからの曲げ変形量が想定よりも大きかったため、当初予定していたダイヤルゲージとひずみゲージによる計測方法では、計測精度と計測手間の面で課題があることがわかった。このため、大変形にも追随できるような新たな変形計測方法、たとえば画像処理による変位計測といった改良に関する検討に時間を費やしたため、進捗状況にやや遅れをとることとなった。 現在、新たな対策を考えており、計測システムを一部変更することにより、最終年度の確認のための実験を実施し、当初予定の実験ケース数に到達する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
中詰材を詰めたパイプインパイプの接合部構造についての検討を進めると同時に、予想よりも大きな曲げ変形にも対応できるよう、計測方法を一部改良して、これまでの研究成果を確認する実験を行う予定である。 具体的には画像処理による変位計測が最も有力な対策と考えており、これまでの実験結果を裏付ける意味でも、改善された計測システムのもと、予定された実験ケース数分を実施し、研究成果を取りまとめる予定である。 また、パイプインパイプ同士の接合方法に関する研究も、実現化を目指す最終年度の課題と考えており、メーカーや建設会社との意見交換等を行いながら、具体的な提案ができるところまで完成度を高めたいと考えている。 最終年度となる平成27年度は、これらの成果を受けて、国内外での論文発表や学会発表を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
パイプの靱性が高く、大きな曲げ曲率まで変形したため、計測装置のひとつであるダイヤルゲージで計測するためには、実験途中で計測装置の盛り替え作業が必要になるなど、実験1ケースあたりの実験時間が長くなってしまった。このため、大きな変形まで計測可能な方法の検討に時間を費やすこととなり、実験ケース数が当初予定よりも少なくなってしまった。 物品費として計上していた実験供試体であるパイプの消費量が少なかったのはこのような理由による。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた実験ケース数を実施するために、新たな試験供試体(アルミパイプ)を購入して実験を行う。また、パイプ両端に設置するエンドキャップも、一部不足しているため、追加発注する予定である。 一方、現在の計測方法に対する修正案として、大変形に対応した計測方法である画像処理による計測を考えており、計測方法が確定した時点で、物品費の内訳について一部、見直しを行う必要がある。予算の一部は、そのための装置に充てることも考えている。
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