横断歩道橋の振動使用性の検討においては,歩行者が歩道橋横断時に感じる“揺れによる不快感”が問題となっている.本研究は,この問題に対して,歩道橋利用者の生体脈波を収集し,歩道橋の不快な揺れを利用者の生体脈波から直接評価する手法について検討したものである.研究最終年度は,これまでの研究で得られた結果の再検証のため,被験者数を増やして現場実証試験を継続し,歩道橋を利用する場合の利用者の不快感の影響度を定量化した. まず,被験者の歩行パターン(歩調)の違いが,生体脈波のリアプノフ指数の変化率に与える影響を検討した.その結果,歩道橋の固有振動数に近い歩調で歩行する場合の被験者のリアプノフ指数の変化率は,他の歩調で歩行する場合よりも大きくなった.このことから,歩道橋と共振する場合に歩行者が受ける不快感は,リアプノフ指数の変化率で評価できることを示した.また,リアプノフ指数の変化率を導入したことで,被験者ごとのばらつきや違いが少なくなり,不快感を相対的に評価できる指標としての利用可能性を示すことができた. 次に,被験者が歩道橋を共振歩行することで,歩道橋中央部付近の加速度は鉛直方向と橋軸直角方向の2軸に対して複雑に振動することがわかった.そして,被験者の歩行時加速度も鉛直・水平方向の2軸に対して複雑な動きをすることがわかり,この影響によって被験者が不快を継続的に感じている可能性があることがわかった.また,被験者の歩行時加速度と歩道橋の桁の振動加速度の相互関係を定量化した指標(2次元加速度振幅距離比)と,歩道橋横断時の被験者のリアプノフ指数の変化率との関係を分析したところ,2次元加速度振幅距離比が大きくなるほど,歩行者のリアプノフ指数の変化率が大きくなり,両者に相関関係があることがわかった.
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