研究課題/領域番号 |
25420479
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小嶋 啓介 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40205381)
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研究分担者 |
大堀 道広 福井大学, 附属国際原子力工学研究所, 准教授 (50419272)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 常時微動 / S波速度構造 / 空間自己相関係数 / 逆解析 / H/Vスペクトル / 若狭地方 |
研究実績の概要 |
東北地方太平洋沖地震は,原子力発電所の安全基準を根底から見直す契機となるとともに,原発立地および周辺自治体住民の安全確保に多大な課題を突きつけた.福井県若狭地方は多くの原発を有しているが,活断層も密に分布し,地震被害予測を綿密に行う必要がある.しかしながら,原発周辺の地盤探査は綿密に行われる一方,市街地については詳細な地下構造調査がなされておらず,防災計画の基礎となる地震被害予測の信頼性は高いとはいえない.本研究では,常時微動のアレイおよび単点3成分観測観測に基づいて,S波速度構造を推定する方法を提案するとともに,若狭地方で実施する詳密な観測に適用し,信頼性の高い地下構造モデルを提示することを目的としている. 平成26年度には,小浜平野の深部地盤構造の解明を目的として,半径500m程度の常時微動のアレイ観測を4箇所で実施し,Rayleigh波位相速度を求めるとともに,位相速度と空間自己相関係数に基づいて,地震学的基盤までの地下構造の推定を行った.また,25年度に実施した単点3成分観測から求められるH/Vスペクトルをターゲットする地下構造推定結果と併せて,小浜平野の地下構造モデルの提案を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地下構造推定対象として設定した,福井県若狭地方の若狭町および小浜市において,常時微動のアレイおよび単点3成分観測を予定通り実施することができた.また,観測情報に基づいて,若狭町では新第三紀基層まで,小浜市では地震学的基盤までのS波速度の推定を行い,重力異常や反射法弾性波探査などの既存資料と矛盾のない構造が推定できていることを確認した.さらに,観測点の推定構造をサンプルとし,平野域の3次元S波速度構造モデルの構築を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には,アレイ観測に基づく空間自己相関係数,単点3成分観測によるH/Vスペクトルおよび強震観測から得られるレシーバ関数を対象とし,平野域全体の地下構造を同時に推定する方法を開発する.この方法では,例えば小浜平野では8箇所のアレイ観測,約80箇所のH/Vスペクトルならびに2箇所のレシーバ関数が同時に評価され,すべての地点で観測結果を矛盾なく説明できる地下構造の推定が可能となる.その結果,推定構造の不確定性を克服して精度向上が期待され,地域の地震被害予測の信頼性の大幅な向上が期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
若狭地方で行う常時微動のアレイ観測のうち,候補地点のいくつかの点では,地形や地質条件により表面波の位相速度が求まらないことを前提として計画を行った.しかしながら,実際に観測を行ったところ,すべての地点で表面波の位相速度曲線が求まり,地下構造も順調に推定でき,予定よりも少ない観測から小浜平野の深部地盤構造に関する情報が得られたことにより,観測計画を変更したため.
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次年度使用額の使用計画 |
小浜市の熊川断層ならびに若狭町の三方断層活動に伴う食い違い構造を明らかにすることを目的とする微動観測を追加し,観測とデータ分析に係る補助作業等に使用することを計画している.
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