研究課題/領域番号 |
25420486
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
三神 厚 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (10262122)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 南海トラフ / 南海地震 / 東南海地震 / 震源特性 / 揺れに関する体験談 |
研究実績の概要 |
高知市の基盤レベルでの地震動予測を行うためには,震源特性の把握が不可欠である.昭和南海地震当時,強震観測体制は整っておらず,十分な観測記録が得られなかった.加えてそれ以降,同震源域を震源とする地震はほとんど発生しておらず,結果として,現在でも震源特性の把握が出来ていない.このような理由から,平成26年度の最大の研究目的は,揺れに関する体験談を利用し,震源特性を把握することであった.当初の予定では,南海地震の震源域のみの把握を考えていたが,世の中の情勢は,南海地震のみならず,東海,東南海,南海地震が同時に発生する三連動地震を考えることが主流となってきている.また高知市への影響を考えると,少なくとも南海地震と東南海地震の同時発生までは考慮した方がよい.それらを鑑み,本研究では南海トラフを震源とする地震として,1944年東南海地震と1946年南海地震の両方の震源特性の把握に努めた.具体的には,昭和南海地震については,従来の揺れに関する体験談に加え約70の体験談を新たに見出し,合計約350の体験談データベースを構築し,再評価を行った.結果は,従来とほぼ同様なものとなった.高知県東部については体験談が少ないという問題があったが,これについては追加調査でも大きな進展はない.複数の短周期発生域からなる神田らのモデルを使って和歌山県南部,徳島県南部,高知県西部の各地へのP波,S波到着時刻を推定したが,徳島県南部において複数得られた「水平動が上下動に変化した」という証言を説明することはできなかった. 東南海地震については,三重県,愛知県,静岡県(西部のみ)から約300の揺れに関する体験談を収集し,神田ら(2004)の震源モデルと対比させながら,分析を行った.その結果,神田らの震源モデルは揺れに関する体験談の傾向と概ね整合するものの,一部において見直しが必要であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高知市の地震動予測,被害予測の精度を高めることが本研究の目的であるが,そのために,南海トラフを震源とする地震として,昭和南海地震,昭和東南海地震を考え,それらについて揺れに関する体験談を広く収集した.その結果,昭和南海地震については約350,昭和東南海地震については約310もの揺れに関する体験談を収集することができた.南海地震に関する体験談は,津波に関するものが圧倒的に多いため,揺れに関する体験談に特化してこれだけ収集した研究は他にないと思われる.大量の情報を収集,分析した結果,震源特性の様子がかなりわかってきて,既存のモデルの改善点が見えてきた.本来はこの揺れに関する体験談をもとに,従来の震度インバージョン解析を見直し,新たな震源モデルを構築することを目指していたがそこまで至っておらず,課題として残っているので,現在までの達成度を「やや遅れている」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
課題の解決に努めるとともに,平成27年度の研究計画を遂行する.基盤レベルの地震動を評価することが1つの目的となっているが,現在,内閣府で想定されている震源モデルを仮定した場合についてはすでに解析を終えている.そのため,震度インバージョンに基づく震源モデルの構築,見直しを平成27年度の早い段階で実施し,震源モデルの入替えを行うことで,高知市の基盤レベルの地震動評価を可能にする. 常時微動を含むこれまでの調査で,地表から沖積層基底面までの地盤特性の把握,モデル化については可能になってきたが,沖積層基底面より深い地盤のモデル化が不十分であることが新たな課題として見出された.この解決策としては,地表面レベルで観測された地震動を使った逆解析による推定法の実施を模索している.そのため,防災科学技術研究所のK-NETや気象庁の地震計,その他,高知港などで観測された強震記録の収集を進めている.必要に応じて,所有している簡易な地震計を現地に設置し,自分自身で強震観測を行うことも視野に入れている.
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