集成材木橋のボルト接合ではボルトとボルト孔の隙間によるガタを防止するため、隙間には樹脂を充填する。充填樹脂はボルト接合部の機能を向上させるが、ボルトのボルト孔内部での偏在が樹脂効果を低減させること、樹脂型はボルト孔をボルトと同一径とする打込み型に比べて、ボルト周辺の応力集中が大きくなることを明らかにしてきた。 H25~H26年度は樹脂効果の一般性を得るために、ボルト偏在のないモデルの追加実験を行うとともに、応力集中の軽減とボルトの偏在の負の影響を受けないモデルとして、ボルト孔両端を広げるテーパ域を設けたモデルを提案し、このモデルが応力緩和とボルトが偏在しても、樹脂効果は十分に維持できることを明らかにした。これらにより、本モデルは接合部のボルト本数の低減、施工性の軽減を可能とした。これらの実験では実橋で採用されたエポキシ樹脂を充填樹脂として使用してきた。H27年度は樹脂の選択肢を広げるために、耐候性や湿潤状態での接着性に優れるアクリル樹脂の適用性についての検討を行ったが、エポキシ樹脂が充填樹脂として優れていることを明らかにした。 安全なボルト接合部を供用するためには、終局に至るまでの挙動を把握することは重要で、そのためには数値解析による検討も必要となる。本研究では接合部の終局までの非線形挙動を解析できるモデルを提案し、このモデルは実験結果を十分に再現できる精度を有することを明らかにした。以上により、今回の補助金の目的はすべて達成したことになる。 接合部の挙動を忠実に捉える解析モデルを作成する際に、内部挙動を可視化ができれば、解析モデルの開発に有益な情報を得ることができる。本研究では可視化にCTスキャンの使用性の検討を付加した。対象モデルは簡単なものとして木材からの木ねじの引抜きで、CTスキャンによる可視化が可能であることを明らかにした。
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