近年、我が国の重要インフラである鋼橋において、重度の腐食劣化が原因で大規模な補強や通行止めなどが多く報告されるようになり、鋼橋の老朽化に伴う安全対策の必要性が強く求められている。そのような状況の中、腐食環境の厳しい沖縄において、著しく腐食劣化した鋼桁橋の崩壊事故が生じるなど現況は深刻であり、腐食劣化した鋼橋に対し安全かつ実用的な耐久性能評価法の確立が急務となっている。本研究では、鋼橋の腐食部位の中でも腐食速度が著しく、橋の安全性が即座に損なわれる危険性のある高力ボルト継手を対象とし、腐食高力ボルト継手の残存耐荷力性能と疲労耐久性の評価を目的としている。研究実施に際しては、腐食高力ボルトの腐食減肉量と残存軸力の定量評価法の構築および腐食高力ボルト継手の残存耐荷力性能評価法の提案について研究を行い、腐食劣化した高力ボルト継手の安全かつ実用的な耐久性能評価法を提案することを目標としている。 最終年度の本年度の研究では,実腐食減肉形状を有する摩擦接合継手型の高力ボルトを対象に,腐食したナット部及びボルト頭部の腐食減肉形状と残存軸力の計測実験を行った.また,ナット部とボルト頭部の腐食減肉形状をモデル化した弾塑性FEM解析を行い,それらの腐食減肉形状と残存軸力との相関分析を行った.実験及び解析結果より,ナット部とボルト頭部の座金近傍範囲における平均腐食減肉量を適用することで,実腐食減肉形状を有する高力ボルトの残存軸力特性を明らかにし,実用的な腐食高力ボルトの残存軸力評価法の提案を行った.
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