本研究では、腐食の進行によりウェブと下フランジの首溶接部付近の破断損傷を模擬した試験体を設定し、このモデルに対して、下部欠損のみの回復とウェブ全面の健全回復を各種補修材で補修した試験体を製作し、せん断耐荷力実験を行い、鋼プレートガーダー腹板の補修・補強による機能回復方法について前年度の試験結果も踏まえて総合的に検討を行った。 1. 耐荷力実験に用いた各種補修を施した試験体は以下の通りである。①下フランジとウェブとの溶接破断部による荷重伝達機能の回復を目的に、板厚4.5mmのL字型鋼板を高力ボルト接合したモデル(従来工法)、②板厚3.2mmのL字型薄鋼板を下フランジとウェブの両面に接着接合したモデル、③板厚3.2mmのL字型薄鋼板を下フランジとウェブの両面に接着剤で設置した後、ウェブパネル全面に低弾性炭素繊維シートを接着剤で接着接合したモデル、④薄鋼板を接着後、ウェブ全面にウレタン系接着剤を塗布し、片面4層の低弾性炭素繊維シートを接着させたモデル、⑤L字型薄鋼板を下フランジ上面も含めてウレタン系接着剤にて接合させ、更にはウェブ全面にウレタン系接着剤を挿入し、4層の低弾性炭素繊維シートをエポキシ系接着剤にて接合させたモデルである。 2. 腐食桁端部を模擬したせん断耐荷力実験において、従来の当板ボルト工法は、下部欠損モデルに対して、耐荷力および変形性能ともに回復することを示した。 3. せん断耐荷力実験では、弾性係数の低いウレタン系接着剤を母材と補修材料との間に挿入することで、補修材料の剥離が急激に起らず、耐荷力の回復と高い変形性能の持続が共に得られた。
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