研究課題/領域番号 |
25420490
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
穴見 健吾 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30272678)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疲労強度向上 / 低温相変態溶接棒 / 溶接継手 |
研究概要 |
平成25年度は、溶接継手部の疲労強度向上法として、溶接時に溶接継手部に圧縮残留応力を導入することが可能な低温相変態溶接棒の新しい適用手法の検討として、(1)溶接ルート部の疲労問題、(2)付加物溶接継手の主板側および付加物側止端部の疲労問題に対する適用性を疲労試験や有限要素法を用いた残留応力解析を用いて検討を行った。以下に現在までの成果をまとめる。 (1)溶接ルート部の疲労問題 溶接ルート部からの発生する疲労亀裂に対する疲労強度向上法を検討するために、片面すみ肉T字継手試験体を製作し、主板側に亀裂が進展する場合、および溶接金属内に亀裂が進展する場合の両方の疲労現象を再現する疲労試験を行い、それぞれのケースでの低温相変態溶接棒の適用性の効果について検討を行った。結果は、主板側に進展するような疲労現象に対しては低温相変態溶接棒の適用は非常に大きな効果が得られたが、溶接金属内に進展していくような場合には普通溶接材料を用いた場合よりも疲労強度が低くなるという結果となった。この現象を変態膨張に着目した残留応力解析およびすみ肉溶接ルート部に切り欠きを入れたシャルピー試験体を用いた靭性評価試験から検討を行った。 (2)付加物溶接継手止端部への適用性 低温相変態溶接棒は、従来主板の止端部から亀裂が発生するような現象に対して適用性が多く検討されているが、本研究では、付加物側の止端部への適用性を検討し、更に付加物側止端部および主板側止端部を同時に疲労強度向上させることが可能かの検討を行っている。具体的には、付加物側止端部に低温相変態溶接棒により付加溶接を行った場合、および主板側と付加板側止端部に付加溶接を行った場合について、荷重伝達型十字継手および面外ガセット継手試験体を製作して疲労試験を実施し検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象としている低温相変態溶接棒の溶接継手部の疲労強度向上に向けた新たな適用性として、従来の主板側止端部だけでなく、溶接部全体(2つの止端部およびルート部)に対する適用性の検討に向け、実験的な検討を進めることができている点で予定通り検討が進展していると考えている。但し、付加物側止端部に付加溶接を施した荷重伝達型十字溶接継手試験体については、目的としている亀裂が発生しなかったこともあり、試験体設計を含め再度検討を進める必要があると言う点で「概ね順調に進展している」という評価を行っている。 現在のところルート部への適用性に関して2件の外部発表を行っているが、今後も成果を公表していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に作成した試験体の疲労試験を継続して行うこと、また、付加溶接時の温度履歴の測定を含め、より精度の高い導入残留応力の評価手法について検討を行っていくことが平成26年度の課題である。また、現在まで行っている基礎的な継手の疲労試験の成果を踏まえ、より実構造物に近い形の試験体の設計および製作をすることが平成26年度の課題である。
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次年度の研究費の使用計画 |
試験体製作に関して、荷重伝達型十字継手試験体および面外ガセット継手試験体を当初予定より若干少なめに製作し、その疲労試験結果を得てから、更に試験体を予定通りの数量に製作するか、改良を加えるかを判断する方向に支出計画を変更したため。 平成26年度は、平成25年度の疲労試験の結果を踏まえ、一部改良を施した疲労試験体を製作する予定であり、平成25年度当初に予定していた数量の試験体の製作に平成25年度の予算の残額を使用する予定である。
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