本研究は溶接継手部の疲労強度向上手法の一つとして、溶接時に圧縮残留応力を導入できる低温相変態溶接棒の活用法を検討することを目的としている。従来、溶接継手部の疲労強度向上の低温相変態溶接棒の活用に関する研究は多くなされているが、その多くが主板側溶接止端部、特に回し溶接の主板側溶接止端部へ付加溶接により適用しようとする研究が多い。本研究では、低温相変態を①本溶接として用いた時の溶接ルート部の疲労強度特性、②付加溶接として用いた時の回し溶接の付加板側溶接止端部への適用性および主板と付加板側両止端部へ同時に適用したときの疲労強度向上効果について検討することを目的としている。研究期間初年度および2年目において、片面すみ肉溶接を用いた検討により、ルート部から主板へき裂が進展するような疲労現象に対しては大きな効果を有するが、溶接ビードへき裂が進展するような現象については効果が認められないことを実験および解析的に示した。また付加物側回し溶接止端部への付加溶接として適用性についても検討を行い、付加物側溶接止端部に対しても大きな疲労強度向上効果が得られること、また主板側回し溶接止端部へ付加溶接をした後、付加板側溶接止端部に付加溶接をしても主板側の疲労強度向上効果に変化は見られないことを示した。最終年度は、主板側回し溶接止端部に対して行った付加溶接の疲労強度向上効果に大きなばらつきが生じた原因につき、本溶接の溶接ビード形状および付加溶接の入熱量の影響について検討を行い、主板への溶込み率と疲労強度向上効果の関係について検討を行った。また、十分な溶け込みを得られるための付加溶接施工条件について実験的に検討を行った。
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