研究課題/領域番号 |
25420501
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
西山 哲 岡山大学, その他の研究科, 教授 (00324658)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 河川管理 / モニタリング / 3次元計測 / 車両走行計測 / 低コスト化 / レーザ照射 / 堤防形状計測 / 河川防災 |
研究概要 |
近年はゲリラ豪雨による堤防決壊や河川構造物の老朽化による河川被害が多発する傾向にあるが,目視点検やGPS測量といった人的労力による管理しか実施されておらず,広域な河川箇所のどこが,どのように危険な状態にあるのかを災害前後に迅速かつ正確に把握するのが困難な状態である.本研究の目的は,レーザスキャナ機器を搭載した車両を走行させながら広域をリアルタイムで3次元測量する技術を構築し,計測コストを抑えながらも,高精度,高密度で面的なモニタリングで河川堤防および河川構造物を監視できる技術を実現させることである.開発初年度は本計測技術の基本となる河川堤防・構造物のレーザ照射技術の構築に着手し,現状の車両搭載型レーザ照射機器で使用されている数10mの照射距離で1万回/1秒間の密度のレーザ仕様から,数100m以上の遠方の対象物を10万回以上/1秒間の密度で照射する仕様に高度化した場合,どの程度の計測精度が期待できるのかを検証する実験を行った.その結果,次の性能が確保されることを明らかにした. ・計測精度は30km/s以下の場合は車両走行速度に依存せず,レーザ照射距離によって決定され,堤防形状の把握のためには照射距離200m以上,照射密度30万点/秒以上の仕様の機器が必要となる. ・走行車両の自己位置の解析には,通常GPS配信される観測データおよび補正情報や近傍の電子基準点における観測データおよび補正パラメータを使用するが,計測場所や時間帯によってGPSからの情報が異なり,高精度計測が安定して実施できないことが欠点であった.本研究においては車体に搭載しているGPSの自己位置精度向上策として河川距離標の位置観測を同時に実施し,それに基づいて計測データを補正する等の計測技術の構築を図った.その結果どのような河川でもレーザ照射距離が30m以内で±20mmの高精度計測が可能であることを実現させた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
遠距離レーザ計測では,例えばレーザを照射した角度が1°違った場合には5m先の距離では約10cm程度想定した箇所と異なる個所の計測値を得ることになるが,15mの遠方の物を対象にした場合では約1mも照射位置が異ってしまう.これが誤差になり,30mでは2mの精度しか発揮できない.このように遠距離レーザは高精度計測への適用例が無く,あらためて計測技術を構築する必要があった.本年度での研究では,この課題の克服に取り組み30mの距離で±20mmの計測精度が確保できるレーザスキャナ車両走行計測技術を確立させた.これにより次のような画期的な河川堤防計測技術を可能にした. ・高精度の変状解析をいつでも,どの個所でも発揮できる計測技術:定期縦横断測量200m間隔,航空レーザ測量50cmメッシュに対して1~3cmメッシュの高密度で±20mmの変状を検出する汎用的な計測技術を完成させた. ・車両走行という簡便な手法を活かす点検作業の構築:航空レーザ測量と同等の広域を対象にしながらもGPS測量と同等の高精度でできる計測を,迅速かつ簡便に実施できることを可能にした. ・広範囲にわたる計測箇所の中から重点的に調査をする個所を抽出するスクリーニング作業を容易にし,さらには点検結果のデジタルデータベース化など従来の点検作業を高度化させることも可能にした.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度で研究したレーザ照射技術を基にして河川堤防の計測データを広域にわたって取得した場合,1現場当たり数テラバイト以上の膨大なデータ量となり,通常のパソコンでは計測処理したデータを簡便に扱うことができない状態になる.そこで解析データをコンパクトにしながらも忠実に地形をモデル化するTIN(Triangulated Irregular Network :不整三角形網)と称される三角形網で堤防形状を表現し,それを高速で処理するソフトの開発を行なう.このTINより成る地形モデルにおいては,観測する個所によって三角形網の疎密度を変えることでデータ量を調整することにより,パソコンで容易に取り扱えながらも細密な部分を正確に再現する堤防モデルが作成できるようになる.次に計測範囲内に基準となる計測点をいくつか定めておき,時系列データを重ね合わせた際の当計測点の座標値の重なり具合を残差とし,その残差の2乗和が最小となるように処理することで,地震や洪水時の管理として要求される精度である±20mmの堤防変位を定量的に把握することを可能にする.これによって河川構造物の変状検出も同様に可能となり,地形モデルの表示から堤防天端および法面における任意の箇所での変位の定量化を行う一連の処理をパソコン上で3次元モデルを見ながら操作できるソフト技術を完成させる.
|