研究課題
本研究では,拡張型相似則の妥当性の検証を行うことを目的とする.拡張型相似則とは,遠心場における相似則と1g場における相似則とを組み合わせたものであり,これらの相似則を組み合わせ大縮尺の模型実験を可能にするものである.仮想1g場の変換係数(縮尺の逆数)をμ,遠心場の変換係数をηとしたとき,μ×ηを保ったまま,これらの組み合わせを変化させる.本研究では,模型縮尺が1/100となるようにμとηを選択し,ηg場で遠心模型実験を行い,実物換算値の同一性をもって拡張型相似則の検証を行う.平成25年度に得られた結論は以下の通りである.遠心加速度が4.9gから50gの範囲において,曲げモーメント,加速度,過剰間隙水圧に関する拡張型相似則の適用性が確認された.ただし,4.9gの場合には,杭頭が負の方向に変位する場合に,曲げモーメントの鉛直分布が他のケースと一致しない結果となった.その原因として,地盤の相対密度の違い,杭頭の加速度の違い,地盤のせん断剛性の違いに着目し検討した.その結果,拘束圧の小さい4.9gの場合,他のケースよりも地盤のせん断剛性が小さいことがわかった.これは拡張型相似則の限界を示すものであると考えられる.平成26年度は,傾斜地盤の液状化時の挙動について,特に側方変位量に着目して実験を行った.また,同相似則の検証に対する信頼性を確保するため,他の3つの研究機関(国内2,海外1)と共同で一斉実験を行った.その結果,変位の相似則については,同一研究機関の結果を比較すれば,妥当とみなせる結果が得られた.しかし,機関ごとの実験結果を比較すると,入力加速度の違いや装置の違いのため,実物換算した変位量にはばらつきが見られる結果となった.
2: おおむね順調に進展している
加速度に関する拡張型相似則は,センサーの傾斜による残留値を除き,全てのケースにおいて時間領域,周波数領域でよく一致し,10gから50gの遠心場で同相似則の適用性が確認できた.過剰間隙水圧の上昇と消散過程については,先と同様の遠心場においては,おおむね一致し同相似則の適用性が確認できた.側方変位については,25g場と50g場では,加振開始から20秒までよく一致する傾向が見られたが,残留変位量については有意な差が生じている.このことから,拡張型相似則の限界として考えられる10g以下の低い遠心場に加え,同相似則の適用に当たっては,変位の大きさについても遠心力の大きさと縮尺の関係から許容できない誤差が生ずることがわかった.すなわち,20%を超えるような大きなせん断ひずみが発生する液状化時の地盤模型に対する拡張型相似則の適用性について,理論的な誤差の大きさを求めておく必要がある.
当初設備備品として導入予定であった「小型コーン貫入試験機」の導入が遅れている.平成27年度は,本研究課題にも関係する国際プロジェクトの一環として,米国,英国,中国,台湾等の研究機関とともに一斉試験を行う予定である.この一斉試験では,「小型コーン貫入試験機」を導入し,模型地盤の強度特性を正確に測定することが求められるため,同試験機を早急に導入する予定である.また,変位に対する相似則の適用限界を明らかにするとともに,本研究課題最終年では,今後拡張型相似則が広く用いられるようユーザーの視点に立った環境整備を進めたい.
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Geotechnics for Catastrophic Flooding Events, Taylor &Fransis Group, London, ISBN978-1-138-02709-1
巻: 1 ページ: 127-182