研究課題/領域番号 |
25420510
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
仙頭 紀明 日本大学, 工学部, 准教授 (40333835)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液状化 / 間隙 / 再配分 / 地盤変状 |
研究概要 |
東日本大震災で液状化が発生した無対策地点と液状化対策をしていた無被害地点の両方を一度に調査可能な宮城県仙台市の仙台塩釜港向洋埠頭を選定し,液状化ポテンシャルサウンディング(ピエゾドライブコーン)を実施した。この方法は,動的貫入試験装置の先端に間隙水圧計を内蔵し,地盤のN値のみならず過剰間隙水圧の応答から土質区分が推定できるものである。この方法を用いると従来のサウンディング・サンプリングと異なり,連続的にN値が計測できるとともに,細粒分含有率を高い解像度で評価できる。調査結果は,無対策地盤では地盤が沈下して密になっているが,実際は顕著なN値の増加は確認されなかった。そのため再び中程度の強さの地震が発生すると再液状化する可能性があることがわかった。一方,ドレーンによる排水系の液状化対策をした地盤では,予想以上に多くの細粒分を含み,細粒土に近い地盤であったが,その割にはN値が高く,液状化に対する安全率も高かった。これは対策工があることで地震中の排水を伴う繰返しせん断により地盤が締まったことで強度が増加した可能性がある。今後は間隙の再配分の痕跡を見つけるために,細粒分含有率の深度方向分布とN値の深度方向分布を比較しながら分析を行い,両者の間に一定の法則があるかを見出すことが今後の課題である。 室内要素実験に関しては,中空ねじり試験装置を用いて体積ひずみ速度・せん断ひずみ速度比を一定に制御しながら繰返しせん断試験を行った。25年度は一定速度で供試体から間隙水を排水しながら実験を行うことで,排水系の液状化対策を施した地盤の状況を模擬することとした。なお試験中の軸応力一定制御のためにパルスモータ式のジャッキとサーボコントローラを購入した。実験より,繰返しせん断中に供試体からの排水により,非排水条件の時と比べて液状化強度が増加した。その強度の増加率と排水速度の関係をまとめて成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は地盤調査による現場実験,室内要素実験を計画していた。地盤調査は調査地点の選定,調査方法の検討と実施計画,調査の実施,調査のまとめと成果の学会発表すべての項目を達成できた。 室内要素実験は間隙水が流出する条件の試験の試験計画,試験実施,成果の学会発表についいてすべての項目を達成できた。 一方,25年度中に実施した成果を踏まえて,年度末に米国に渡航して研究者と打ち合わせを行って,26年度以降の研究に反映させようと計画していたが,双方の都合が合わず実現できなかった。 これらを踏まえて,研究打合せを実施できなかったことを除けば,当初の項目をすべて達成できていることから,研究は概ね順調に進行しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はこれまで実施した現場実験,室内実験結果の詳細な分析を行い,学術雑誌に論文投稿することで,広く成果を公表する。 加えて液状化解析を実施して,25年度に実施した試験結果の再現を試みることで,数値解析手法の性能並びに適用限界を把握することで,適用性を検証する。液状化解析としては,世界的に良く用いられているシンプルなUBCsandモデル,汎用性が高くより高度な解析手法であるPM4Sandの2種類のモデルを対象とする。 さらに上記分析により,間隙再配分のメカニズム解明のために必要な追加の室内要素実験を計画し,実施するものとする。 研究の方向性を評価・見直しを行うため,米国での研究打合せを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度中に実施した実験結果をもとに,次年度以降の研究計画を評価・見直しを目的に米国での研究打合せのための渡航費用を見込んでいた。 しかし実験結果が出揃う年度末の時期の渡航を計画していたため,相手方の研究者との都合があわず25年度中の実施を断念した。そのため,当初計画していた海外旅費を執行できなかった。 平成26年度はこれまで実施した現場実験,室内実験結果の詳細な分析を行い,学術雑誌に論文投稿することで,広く成果を公表する。そのため費用を見込んでいる。加えて液状化解析を実施して,25年度に実施した試験結果の再現を試みることで,数値解析モデルの適用性の検証を行うこととする。そのためのソフトウエア―保守費用を見込んでいる。加えて間隙再配分のメカニズム解明のために必要な追加の室内要素実験を実施するものとする。実験に関連する消耗品費を計上している。 さらに26年度中には学会発表のための旅費を計上している。その旅費に25年度執行できなかった費用を追加して,米国に渡航し研究打ち合わせを実施する。
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