研究課題/領域番号 |
25420514
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小林 薫 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80443638)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | キャピラリーバリア / 限界長 / 貝殻 / 水分特性曲線 / 不飽和浸透 / ブレークスルー / 覆土 / 降雨浸透制御 |
研究概要 |
キャピラリーバリア(以下、CB)は、上層に砂、下層に礫を敷設した層状地盤をいうが、数十年に及ぶ長期供用では、地震等に伴う土粒子の混合によりCB機能が低下する危惧があった。これに対し、破砕した貝殻を礫代替材として下層に用いることで、粒子形状効果等でCB機能を保持したまま、粒子混合も防止できることを実験的に見出した。本研究では、扁平な破砕貝殻の粒径・粒度分布ごとの不飽和浸透特性等を定量化し、水理学的特性に基づき破砕貝殻を用いたCBの性能評価を行った。加えて、実用化に向けた長期安定性の高い最適なCB構造と構造設計法を確立に向け、室内大型土槽とフィールドで実験を実施した。 (1)飽和した貝殻供試体にマトリックサクションを作用させると粒径区分の大きさに関わらず、急激な体積含水率の低下を生じ、粒径区分4.75~9.5mmと2.0~4.75mmの供試体は、体積含水率はほぼゼロに近づいたが、2.0mm未満の貝殻供試体の場合は水分が残存し保水性を確認した。また、破砕方法の違いによる水分特性曲線への影響は確認されなかった。加えて、粒径区分2.0mm未満の場合、拘束圧を高めることにより保水性が高くなる。 (2)室内土槽実験、フィールド実験共に、覆土+CB層の限界長は、CB層のみの場合における限界長より大きな値を示す、覆土の設置に伴い限界長が伸びる。覆土+CB層の限界長は、同一の散水強度と土槽傾斜角度に対して実施したCB層のみのそれより、室内では平均で約1.7倍、フィールドでは約1.5倍になった。両結果とも、散水強度と限界長の関係に良好な直線関係が得られた。このことから、覆土を通過し砂層への浸潤フラックスを適切に評価できれば、覆土+CB層の限界長を推定できる可能性を示した。 (3)砂礫層の間に敷設する不織布の影響を把握した。その結果、使用不織布は限界長の測定結果に影響を及ぼさないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱は、大きく以下の3項目であり、その中で計画した実験・解析についてはおおむね順調に進んでいる。 (1) 扁平な破砕貝殻の粒径・粒度分布に基づく礫代替材としての適性の定量化と水分特性曲線の解明 : ホタテ貝殻を粉砕して、破砕貝殻の扁平な粒子形状を電子顕微鏡で分析した。また、粒度分布等によるホタテ貝殻の各水分特性曲線を当初予定通りに土柱法等で詳細に把握した。 (2) 大型土槽実験で降雨強度、土槽勾配、層厚、層数をパラメータにしたCB限界長の検証とその性能評価 : 飛島建設保有の大型土槽で、降雨強度(1~50mm/h)、勾配(5~15%)、CB層厚(10~30cm/層)、層数(2、3層)をパラメータにしてCBの限界長を系統的に把握するための実験を実施した。 (3) CBの限界長を精度良く再現できる解析コードの開発・高度化(保有解析コードのUNSAFと比較検証)) : 大型土槽実験の測定データを基に、限界長や流出水量および土中の土壌水分量(埋設した土壌水分計EC10により測定)を精度よく再現するための解析手法について、土壌物理学分野の解析ソフト(HYDRUS)を用いた検証を行った。 (その他) 砂礫境界部の不陸の影響や砂材が礫層間へ混入することを防止するために使用される不織布が限界長の測定結果に及ぼす影響を室内大型土槽を用いた実験結果を基に検討を行い、その影響を定量的に評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者を中心に、3名の連携研究所と1名の研究協力者との連携体制は変更せず、当初予定通りに研究を推進する。また、室内大型土槽による実験については、すでに了解をもらっている飛島建設が保有する大型実験装置を使用して進める計画である。今後の主な研究内容は以下に示す通りである。 1) 大型土槽実験によるCB限界長の検証とその性能評価 : 土壌水分計等を用いた大型土槽実験の結果を基に、土層内の水分移動とブレークスルー現象のメカニズムについて明らかにする。また、既存推定式による限界長と比較検討し、複数の推定式(Ross(1990)、Steenhuis et al.(1991)等)の適合性を評価する。加えて、破砕貝殻特有の異方透水性、砂の水分特性曲線のヒステリシスおよび3層構造を加味した限界長を精度良く推定できる新たな提案式を提示する。 2)CBの限界長を精度良く再現できる解析コードの開発・高度化 : 砂の水分特性曲線は、排水過程と吸水過程でヒステリシスが生じる。CBの厳密な限界長を再現するためには、砂の水分特性曲線のヒステリシスを考慮することが必要である。解析コード:HYDRUSを用いて、水分特性曲線のヒステリシスを考慮した解析を行う。これにより、キャピラリーバリアの挙動メカニズムを明らかにする。 3) 長期耐久性のある安全性の高い最適なCB構造の解明と構造設計法の確立 : 大型土槽実験で得られた結果を整理し、CBの構造と性能(特に、限界長)について分析を行い、想定される降雨強度を基に、CB勾配・層厚・層数・材料と共に安定性を考慮した最適なCB構造を確立する。 今後は、貝殻の再資源化と共に、廃棄物処分場、極低レベル(L3)放射性廃棄物、更には放射能汚染土壌等の長期保管への早期展開を図っていく所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度の途中(10/1~)で所属機関を移ることになったため(飛島建設→神戸市立工業高等専門学校)、H25/9末までに飛島建設が保有している現状の試験装置(大型土槽および大型散水装置)のままで、実施可能な実験を優先させて終了させた。したがって、実験用の大型土槽、大型散水装置の改良を次年度に実施することとした。 次年度は、前年度(平成25年度)に実施予定の大型土槽、大型散水装置の改良を行い、3層構造(覆土の影響)、覆土の厚さがキャピラリーバリアの限界長に及ぼす影響などについて実験を実施していく。その際には、実験補助員が必要になるため、次年度は人件費も生じる。加えて、成果の公表では、国内の主要学会(土木学会年次講演会、地盤工学研究発表会および地下水学会春季・秋季講演会など)への公表・発表だけではなく、国際会議への発信も積極的に行う計画である(H26.7 UNSAT2014,シドニー)。
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