研究課題/領域番号 |
25420520
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
原田 英治 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00362450)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シートフロー / 粒子流 |
研究実績の概要 |
砕波帯付近ではシートフロー状の土砂輸送モードによる活発な粒子運動が発生し、海浜過程に顕著な影響を及ぼす。シートフロー状の土砂輸送モードでは、高濃度の粒子流が高速で流動しているため、実験計測が難しくその内部構造の理解はこれまで十分に明らかにされていない。本研究では、シートフロー粒子流の内部構造を詳細に検討するため、粒子流のLESを実施し、得られる数値情報に基づいて抵抗則を提案することを最終目的としている。 平成25年度は、申請者が開発してきた固液混相乱流モデルの粒子流コードの局所的乱流構造の再現に対する改良を目的に、ダイナミックスマゴリンスキーモデルを組み込んだ。また、改良モデルの妥当性を既存の実験結果との比較から確認するとともに、シートフロー粒子流を対象とした数値シミュレーションを実施した。 平成26年度は、改良した固液混相乱流モデルによる数値シミュレーションコードのシートフロー漂砂に対する再現性を検証するための、実験データを収集した。具体的には、振動流装置を用いたシートフロー粒子流の実験を実施して、実験画像をPIV解析から粒子運動の平均速度および変動速度を抽出した。そして、シートフロー層の内部構造の位相変化について、粒子並進運動に伴う応力や粒子変動エネルギーの観点から検討した。実験データは、次年度以降の研究で計画している改良モデルによるシートフロー漂砂のシミュレーションの再現性を検証するための基礎情報となるが、統計的に信頼できるデータを抽出するには多くの実験結果が必要であるため、実験と画像解析を引き続き実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画では、平成25年度に整備した既設の水理実験装置および購入したハイスピードカメラと人工粒子を用いて、振動流下シートフロー粒子流を対象とした水理実験の実施することが主たる計画内容であった。水理実験装置は、プロペラ式駆動システムを接続した閉管路から構成される。閉管路の一部は、総延長10m、流水断面積10cm×10cmの水平アクリル水路であり、その中央部に長さ4.4m、深さ10cmの段落区間を有した移動床部が設置されている。移動床は、直径1cm、比重1.41のポリアセタール樹脂製のデルリン球を敷き詰めて形成し、正弦波型の振動流を与えて発生するシートフロー粒子流をアクリル水路の側方からハイスピードカメラを用いて流動過程を撮影した。その後、相互相関PIV解析から粒子の移動速度分布を抽出し、鉛直方向へ輸送される運動量輸送の情報から、粒子運動によるせん断応力の鉛直分布のシートフロー層における位相変化を検討した。また、粒子の平均速度と変動速度に関するStokes数の観点から、粒子間の接触と衝突のシートフロー層での位相変化についても考察した。画像解析によって粒子運動の抽出には時間的コストが高いが、統計的に信頼できるデータを得るには同条件の実験を複数回実施する必要がある。現時点では試行回数に不足があると考えられるため、申請時の計画にしたがい今後継続して画像解析を実施する予定である。以上から、現在までの達成度については、概ね順調に計画を進めていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究では、申請者が開発してきたシートフロー粒子流シミュレーションのための固液混相乱流モデルに、ダイナミックスマゴリンスキーモデルを組み込み、局所的乱流構造の再現に対する改良を施すとともに、改良モデルの妥当性を既存の実験結果との比較から確認してきた。また、シートフロー粒子流の水理実験を実施し、PIVによる画像解析から粒子流の内部構造について粒子スケールのレベルから詳細に検討し、粒子運動による応力構造の位相変化について考察してきた。今後、固液混相乱流モデルによる粒子流の数値シミュレーションから実験計測が困難であるシートフロー層の内部情報を抽出するプロセスへ推進することになるが、シートフローに対する開発した粒子流LESの再現性の担保が不可欠である。現時点では、水理実験の試行回数が不十分であると考えられることから、継続して水理実験の実施と画像解析を進めていく予定である。その後、粒子流の数値シミュレーションで必要となるモデル定数のチューニングを終える計画とする。なお、次年度が最終の研究実施年度となること、また粒子変動速度の観点から実験結果を再現するためのモデル定数のチューニングの経験がなく、多くの時間が必要となることも見込まれることから、研究の進行状況に応じて、申請時の研究計画で掲げた目的に向けて研究の推進方策を適宜検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の2月初旬に雑誌掲載料の請求書が届き、2月末の為替レートが確定するまで少し余裕をもって研究費を確保していたため、次年度使用金額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初購入予定であった専門図書を購入する計画である。
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