平成27年度は、前年度までの研究成果を活用して、ダム貯水池の実時間操作支援システムの構築に取り組んだ。まず、様々な予測精度特性をもったダム流入量に関する向こう1か月先までの日別アンサンブル予測値を模擬発生させた上で、それらをそれぞれ考慮したダム利水操作のモンテカルロシミュレーションを実施した。ダム利水操作の最適化計算時におけるアンサンブル予測情報の利用方法として、アンサンブル平均予測を考慮した決定論的方法と、アンサンブル予測系列の分布全体を考慮する確率論的方法とを考え、それぞれ決定論的動的計画法とサンプリング確率動的計画法を適用して最適放流戦略を求め、それに基づいたダム操作シミュレーションを実施した。その結果、アンサンブル予測情報の利用時に確率論的手法を採る方が、ダム利水操作の精度を向上させることが期待できること、またアンサンブル予測情報を考慮する場合の方が、予測系列が1つしか提供されない決定論的予測情報を考慮する場合と比べて、予測が外れた場合においてもダム操作精度の悪化を抑えることが期待できることなどを明らかにした。これらの検討結果を踏まえ、アンサンブル流入量予測情報の確率論的な利用手法に基づいたダム利水操作の実時間支援手順の構築を行った。
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