研究課題/領域番号 |
25420524
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
太田 隆夫 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70233129)
|
研究分担者 |
佐藤 毅 神戸学院大学, 共通教育センター, 准教授 (30304405)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 消波ブロック被覆堤 / 断面変形 / 性能変化 / 透水層の抵抗力算定 |
研究実績の概要 |
本年度においては,まず,昨年度の水理模型実験を補うことを目的に,より質量の小さい消波ブロック模型(平均質量37.6g,代表粒径2.56cm)を約3000個作成し,消波工の断面変形を計測する実験を行った.実験では,昨年と同様に,多方向不規則波造波水槽内に設置した長さ約8.5mの二次元不規則波造波水路(2本)を使用し,消波工の初期断面において法面勾配1:1.3,天端高10cm,天端幅6.0cmの模型を水路に設置した.当初の実験においては水平床上(水深35cm)に消波工模型を設置していたが,断面変形量が小さかったため,作用波力を増大させる目的で高さ13cmの台形状のマウンド上に消波工を置くこととした.20分間の不規則波を10回繰り返し作用させて断面変形のデータを取得することを1回の実験とし,これを10回行った.得られた断面形状のデータ数は600である. 実験で得られた断面変形データから,変形量を表すパラメータSを求めるとともに,変形が大きい実験結果から侵食部分と堆積部分の境界となる点(中心),天端の法肩と陸側(止水板側)の2点での沈下量および被覆層法先の移動量を求め,天端沈下量および法先移動量とSとの関係を表す近似式を得た.この関係式によりSに対応する変形量を与え,Sの各値に対するモデル断面を作成した.また,パラメータSの平均値および標準偏差と累積作用波数との関係などの統計的特性も得られた. モデル断面を用いて断面変形と性能変化との関係を調べるために,数値波動水路(CADMAS-SURF)による計算を行うが,消波工などの透過性構造物を対象とする場合に,透水層の抵抗力算定法の選択と係数値の設定を行う必要がある.当初の研究計画では予定していなかったが,抵抗力算定法と係数設定に関する検討も上記の研究と並行して実施した.反射率と越波量を評価基準とし,実験値と計算値を比較することにより計算精度を検証した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
消波ブロック模型を新たに3000個作成したこと,このブロックを用いて昨年度と同じ条件で実験を3回行ったが変形量がかなり小さかったこと,変形量を大きくすることを目的として,作用波力の増大を図るために実験装置を改良(マウンド部を設置)したことなどにより,年度当初の予定よりも遅れが生じた.また,実験結果より変形量を表すパラメータSに対応するモデル断面を作成したが,結果として堆積部の形状にいくつかの問題が残り,平成27年度において引き続き検討する必要がある.
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度においては,まず昨年度までの断面変形実験のデータにもとづいて,モデル断面を決定し,これを用いた水理模型実験と数値計算により,消波工の断面変形と性能劣化との関係を定量化する.消波工の性能を表す指標として反射率と越波流量を用いる.実験および数値計算の結果より,消波工の断面変形による性能劣化を定量化し,構造物の設計上の許容値との関係から,構造物の変形に対する要補修レベルを決定する.つぎに,断面変形実験の結果にもとづいて,性能劣化モデルとして用いるマルコフ連鎖モデルの状態推移確率の算定を行う. つぎに,性能の要補修レベルを用いていくつかの補修戦略を設定し,マルコフ連鎖モデルを組み合わせて,構造物の供用期間を対象とした性能劣化過程のシミュレーションを行う.各補修戦略に対するライフサイクルコストを算定し,それが最小となる最適補修戦略を見出す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年2月に研究支援者による水理実験データの整理を実施したが,会計処理上の問題により一般校費から謝金が支払われたこと,また,研究分担者への分担金が使用されなかったことにより,結果として201,663円の残高が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度において,研究代表者および研究分担者の旅費,人件費・謝金として使用する予定である.
|