研究課題/領域番号 |
25420528
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉原 裕司 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (70243970)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水工水理学 / 海洋工学 / 地球環境水理学 / 界面水理学 / 地球温暖化 |
研究実績の概要 |
本研究では,風波砕波パラメータを組み込んだガス交換速度のハイブリッドモデルの構築と,そのモデルが海面二酸化炭素収支に及ぼす定量的インパクトを評価することを目指している.研究次年度においては,領域気象モデルWRFと波浪推算モデルSWANを用いた数値シミュレーションを実行し,海洋観測塔での既存の気象・海象データとの比較を行った.WRFで得られた海上風速の計算値をSWANの入力データとし,SWANによる波浪推算を実行した.SWANの計算結果は,波浪の観測データの挙動を概ね再現することができた.WRFとSWANによる海上風と有義波高・ピーク波周期などの波浪データをガス交換速度モデルの入力値として,複数の既往研究の海上風型経験式とハイブリッドモデルから算出したガス交換速度の比較・検討を行った.ガス交換速度の挙動は,値の大小こそあれ,海上風型経験式,ハイブリッドモデルともに風速変動に応答していることがわかった.ただし,海上風型のモデルでは経験式ごとに定量的なばらつきが見られた.これに対してハイブリッドモデルでは風速変動に対する交換速度の変化幅が小さく,波浪場の寄与が大きいことを確認した.本年度の研究によって,気象モデルと波浪推算モデルの計算による交換速度の評価手法の有効性については概ね検証することができた.また,数値シミュレーションを通して,ガス交換速度に及ぼす風応力や成層度の影響についても精密な検討を行い,ハイブリッドモデルを高精度化する上で有用な乱流機構に関する知見を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,海洋観測塔でのフィールド観測に優先して,気象モデルWRFと波浪推算モデルSWANによるガス交換速度の数値シミュレーション手法の構築を実施した.その結果,数値シミュレーションによるガス交換速度の評価手法については良好な成果を上げることができた.結果的に,海洋観測塔におけるフィールド観測を次年度にスライドさせることになったが,観測塔において使用する計測システムやデータ解析手法は概ね準備できていることから,適切な時期にフィールド観測を実施することが可能である.以上のように,研究計画全体として見た場合,研究目的の達成度は概ね順調に進展していると見なすことができる.
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今後の研究の推進方策 |
海洋観測塔おいて大気側の二酸化炭素フラックスと海洋中の溶存二酸化炭素濃度のフィールド観測を実行し,得られた観測データからガス交換速度を算出する.また,併せて海上風速と有義波高・ピーク波周期などの気象・海象データを評価する.乱流機構に関する知見に基づいて新たなハイブリッドモデルの定式化を行い,観測データとの比較・検討によるモデル定数のチューニングを実施する.得られたガス交換速度モデルを気象モデルWRFと波浪推算モデルSWANによる数値シミュレーションに組み込むことで,波浪場が海面二酸化炭素収支に及ぼす定量的なインパクトについて検討を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の予定であったフィールド観測の実施を次年度にスライドさせたため,その経費に関する残額が生じた.本残額は,フィールド観測を実施する次年度に使用することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額については,フィールド観測の遂行に必要な物品購入費や旅費などに充てる予定である.
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