研究課題/領域番号 |
25420531
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 昭男 日本大学, 理工学部, 教授 (80318360)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 漂砂 / 礫養浜 / 海岸調査 / 移動床実験 / 数値計算モデル |
研究概要 |
1.礫養浜を実施した海岸の現地調査について: 礫養浜後の海浜の地形変化と断面地層(砂礫互層)の変化を把握するために,茨城県神向寺海岸・明石海岸において季節変化を勘案して2013年4月27日と9月6日に調査を実施した。また,千葉県幕張海岸において4月23日に調査を実施した。神向寺海岸・明石海岸では,気象・海象データと調査結果を照合することにより,礫養浜後に砂が堆積する海浜の地形と砂礫の状況の変化を把握した.幕張海岸では砂礫の互層の形成と海岸の一部での砂の堆積,季節変化の少ないことが分かった。これらの調査により,礫上の堆砂の夏季と冬季の挙動が明らかになった。 2.断面2次元水理模型実験について: 礫上への堆砂と砂礫互層の形成過程の解明を目的に,現地調査に基づいて夏季と冬季の波浪条件を用いた水理模型実験を実施した。実験条件は,茨城県鹿島灘での観測波浪データを用いて設定し,5種類の砂の粒径に対して,海浜の勾配,波形勾配を変化させて実施した。砂移動の計測では,本研究費で購入した高速度高分解能カメラと画像解析ソフトウェアを用いて水と砂の流れを追跡した。 3.学会での研究調査について: 本研究費の補助により,APAC2013(インドネシア)および第60回海岸工学講演会(九州)に参加し,研究動向を調査するとともに,自らの研究成果を発表することができた。これらはAPAC2013では,” Beach Erosion Triggered by River Mouth Dredging as a Measure Against River mouth closure”,海岸工学講演会では,”大洗海岸における礫養浜と漂砂機構”,”海浜変形に関する新しい数値解析方法”,”東日本大震災震災での地盤沈下影響による涸沼の侵食”であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.礫養浜を実施した海岸の現地調査について:計画通りに実施し,それぞれの海岸の特徴を把握した。茨城県神向寺海岸および明石海岸では,4月と9月に海浜縦断形測量,砂のサンプリング調査,汀線解析を行い,1)静穏波作用時には養浜によって形成された礫浜の表面には砂が堆積する,2)この砂の堆積層は高波浪時には沖向き漂砂により運び去られる,3)高波浪時に表面の砂層は消失しても礫層は海浜基部を埋めて安定的に存在することから,静穏時には再び砂の堆積層が形成される,4)粗粒材は護岸の根固め機能を有することを明らかにした。 2.断面2次元水理模型実験について: 計画通りに実施し,粒径毎に形成される平衡勾配の確認,波浪条件に応じた地形変化を確認し,礫上への堆砂層の形成過程を把握した。現地調査の結果から,礫上への堆砂は岸沖漂砂で生じていることが推定されており,この状況は模擬ことができた。 3.学会発表等の成果の発表: 現地調査の結果は,土木学会論文集(海洋開発)に投稿・査読中である。水理実験の成果は,数値計算モデルの検証データとして活用するので,その成果と合わせて論文発表を予定している。 また,本研究で開発する数値計算モデルのプロトタイプの現地応用に関してICCE2014に論文を投稿しており,”NUMERICAL SIMULATION OF DEFORMATION OF SAND BAR FORMED AT TIP OF FUTTSU CUSPATE FORELAND BY THE 2011 TSUNAMI”と題して発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実施計画に則り研究を進めるが,得られた知見を基にして研究の幅を広げる所存である。 1.礫養浜を実施した海岸の現地調査について: 前年度に継続して実施し,現地の状況を把握する。昨年度の研究成果から茨城県神向寺海岸・明石海岸を重点に調査を行う。また,千葉県一宮海岸でも礫養浜の試験施工が行われており,この状況も逐次に調査して,本研究の参考とする。 2.3次元水理模型実験について:本研究費の補助により,簡易な平面水槽を製作し,礫養浜と堆砂の3次元的な現象を把握する。特に波向きの変化と堆砂層厚の変化の現象を重点に調査する。一方,2013年度までの現地調査の考察によれば,神向寺海岸や明石海岸ではヘッドランドに囲まれた海岸であるが故に礫養浜が成功し,かつ堆砂による海岸環境の回復が実現されたと考えることができる。しかし,ヘッドランドなどの構造物で囲まれておらず,かつ沿岸漂砂が卓越する海岸において礫養浜を行った場合についての研究はなく,その効果は不明である。したがって,このことに関する実験ケースも新たに検討を追加し,礫養浜に対する留意事項を整理することも念頭に置いて研究計画を行う。 3.学会発表について:2014年度の研究成果は,2015年に開催される海岸工学講演会,海洋開発シンポジウム,APAC2015(インド)で発表する予定である。
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