本研究の目的は,侵食が進行した海岸に対して,礫を用いた養浜を実施する場合を想定し,実施後の状況予測を可能とするために必要な養浜後の礫の動態を,現地調査,水理模型実験によって明らかにし,数値計算モデルの構築に反映することである。 現地調査は,茨城県鹿島灘に位置する神光寺・明石海岸と東京湾に面する千葉県幕張海岸において研究機関を通じて実施し,礫上の堆砂とその空間的な特性を系統的に分析した。その結果,太平洋に面した鹿島灘では,礫上の堆砂は波浪の季節変化を強く受けること,冬季には堆積した砂は沖へ移動するものの,夏季には再び堆積して海浜の利用を促進していること,層状の堆積は波浪の強弱に依存することが示され,波浪による海水の浸透効果が大きいことが示された。一方,波浪の影響の小さい内湾の幕張海岸では,礫や砂の移動は少ないものの,汀線付近には堆砂が見られ,海岸地形の保全に大きく役立つことが示された。 移動床水理模型実験では,小型水槽を用いたために縮尺率が小さく,現実を忠実に再現することは困難であったが,礫養浜を模擬した実験では,波浪条件に依存して礫上堆砂が確認されるとともに,海浜地形の安定が確保されることが示された。さらに,礫と砂の粒径差が大きい混合砂礫を用いた移動床模型実験では,単粒径の場合と大きく異なる地形変化が生じ,礫の移動に対して砂が潤滑作用を発揮することが示された。 以上により,礫の動態についての数値計算モデルを構築する上で非常に重要な特性が明らかになり,既往のモデルの改良によりその再現は可能になった。しかし,実験で確認した現象の縮尺効果を明らかにする必要がある。すなわち,実海岸海岸における現象が模型実験で誇張されて現れていないかを詳細に調べる必要がある。これについては,砂礫混合土砂の平衡勾配の決定機構と粗粒材養浜による海浜安定化効果の予測方法の研究を継続する。
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