研究課題/領域番号 |
25420533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人土木研究所 |
研究代表者 |
木岡 信治 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 主任研究員 (20414154)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 個別要素法 / 二層流 / 海氷 / 衝突 / パイルアップ / アイスジャム / ダムブレイク |
研究概要 |
まず、連続体手法を用いた,海氷の漂流・陸上への遡上シミュレーション手法の基礎開発を行った。これは,巨視的に海氷を高粘性流体(連続体)としてモデル化し,非線形長波方程式の2層流モデルの適用を試みた(上層:海氷群,下層:海水).氷と水との間に界面張力を導入するなど,氷の固体としての振る舞いに矛盾しないよう工夫して、現実の海氷の漂流運動に近づけるための試みを展開した.一方,海氷群の離散的性質を考慮するため,離散シミュレーション法のひとつである個別要素法(DEM)を応用した漂流計算手法の開発に着手した.なお,広域のエリアに適用するには,DEMによる計算は莫大なメモリと時間を必要とするため, 2次元計算により平面的に個々の氷の挙動を追跡し,これに別途鉛直運動を考慮する事による準3次元的な計算手法の開発を試みた。さらに、仕事とポテンシャルエネルギーの関係より導出されるshore ice pile upの条件式を準用する事により,パイルアップ(乗り上げ)を考慮できる手法を提案し、試験的な計算を実施した.さらにそのパイルアップ高を実験的に調べるため,まずは,水路上を走行する台車により氷模型群を陸上遡上させ,その状況を観察する実験システムの構築を行った. また,津波による海氷の陸上遡上時の構造物近傍における水位上昇,パイルアップやジャミングの形成プロセス,氾濫流の変化などを定量的に把握することを目的とし,比較的幅広な断面水路でのダムブレイクに基づく実験装置製作・セッティングおよび予備実験を実施した. また,複数氷塊の構造物へのインパクトに関する研究を実施するため、本年度は,まず,既に既存の自由落下方式による衝突装置を改良することにより,複数氷塊の中規模程度の衝突実験をできるようにし,その予備実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画での主な内容は、海氷の漂流・陸上への遡上シミュレーション手法の基礎開発をおこなう事、具体的には,①海氷を粘性流体と見なした漂流シミュレーション、②沿岸・陸上でのパイルアップおよびジャミング現象を考慮した海氷挙動シミュレーションの2つの手法について同時に開発を進める事であった。前者は、巨視的に海氷を高粘性流体(連続体)としてモデル化し,非線形長波方程式の2層流モデルの適用を試み(上層:海氷群,下層:海水)たものである。氷の固体としての振る舞いに矛盾しないよう工夫することが最大の目的であったが、界面張力を導入することでそれを達成した。そして、後者は、海氷の離散的性質を考慮するため、それに適する個別要素法(DEM)を応用した手法の開発であるが.DEMは多くのメモリと計算時間を必要とするため, 基本的に2次元計算により平面的に個々の氷の挙動を追跡するとともに,これに、別途鉛直運動を考慮し、さらにはパイルアップも考慮できる準3次元的な計算手法を開発した。実際にテスト計算を実施し、矛盾のない挙動が確認され、実用的な手法構築に向け、明るい見通しを得た。さらに、特にそのパイルアップ形成条件を明確するための実験装置も作成し、その妥当性を検証するシステムも整えた。 また、ダムブレイクによる津波による海氷の陸上遡上に関する水理模型実験のための実験装置製作・セッティングおよび予備実験を実施するとともに、複数氷塊の構造物への衝突実験のため、既存の自由落下方式による衝突装置(中規模程度)を改良し,その予備実験を行った. 以上より、当初予定した研究実施計画をほぼ実施したと判断し、当該達成度とした。
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今後の研究の推進方策 |
連続体手法および離散体手法による,海氷の漂流・陸上への遡上シミュレーション手法の開発を引き続き行い,さらに精度を高める努力をする.その妥当性の検証のため,構築した実験装置(一定速度に制御)を用いて、特にパイルアップ高に注目した遡上実験を実施し,その、計算に適用するパイルアップ形成条件などについて検討する。 また,ダムブレイクによる、海氷を伴った津波氾濫流に関する実験を本格的に着手し、水位,流速,構造物への作用力等を各種センサー,分力計,ビデオ解析等により測定することにより,海氷来襲時の陸上遡上時および構造物近傍における水位上昇,パイルアップやジャミングの形成プロセス,氾濫流の変化などを注意深く観察し,海氷が存在しない津波と比較し,その被害拡大シナリオを明確にする.また前記の数値シミュレーションに内在するクライテリアの設定の根拠にするなど数値計算と実験の両者をうまく組み合わせ,計算手法開発の効率化を図る. また,複数氷塊の構造物へのインパクトに関する中規模実験を本格的に着手し,複数氷塊の衝突破壊と構造物の動的応答について実験的に調べる.また,DEMによる3次元衝突破壊シミュレーションを用い、複数氷塊に対応できるよう改良するとともに,海氷の衝突破壊および構造物への動的荷重について検討する.
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