研究課題/領域番号 |
25420535
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
室町 泰徳 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (40251350)
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研究分担者 |
兵藤 哲朗 東京海洋大学, その他部局等, 教授 (40218748)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 交通事故 / 都市高速道路 / リアルタイム / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、まず、リアルタイム交通事故予測・回避システムを構成する交通事故予測システムの改良を行った。具体的には、動的なベイジアンネットワークを導入することにより、理論的な整合性を保ちつつ交通事故予測に利用するディテクターの空間的時間的範囲を拡大することが可能となった。また、対象とする路線全体の交通事故予測を統合的に行うためのフレームワークを構築することができた。動的なベイジアンネットワークの全体的な予測パフォーマンスは約78%であり、静的なベイジアンネットワークの場合と比較して、交通事故予測システムのパフォーマンスは約9%向上した。同時に、動的なベイジアンネットワークによる交通事故予測システムを構築する際の主な変数として、対象地点上流と下流の混雑指標差、速度差、交通量差、オキュパンシー差等があることを示した。次に、EMアルゴリズムを交通事故予測システムに組み込むことによって、ディテクターのデータ欠損に対するシステムの頑強性を向上させた。具体的には、データ欠損がシステムの交通事故予測パフォーマンスに与える影響を評価し、特定の変数が欠損した場合でも、EMアルゴリズムを活用することにより、欠損が無い場合とほぼ同様のパフォーマンスを達成できることを示した。最後に、交通事故に至りやすい交通状況から正常な交通状況に戻すための交通事故回避システムの構築を行った。最高速度規制、最低速度規制、オンランプのランプメタリングなどの回避手段の実施による交通状況の変化を表現するために、交通シミュレーションソフトを導入し、首都高速4号新宿線の路線全体の交通状況を再現するためのプラットフォームの構築を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、リアルタイム交通事故予測システムに対し、動的なベイジアンネットワークとEMアルゴリズムを導入することにより、利用するディテクターの空間的時間的範囲の拡大とデータ欠損に対する頑強性の向上を図ることができた。前者は交通事故予測システムのパフォーマンスの向上に寄与し、後者は通常観測されるディテクターによるデータ取得の欠損にもシステムが柔軟に対応することを可能としている。これらの作業により、都市高速道路上においてリアルタイムに交通事故に至りやすい交通状況と正常な交通状況とを分別するリアルタイム交通事故予測システムの開発はほぼ研究計画通りに実施することができたと考えている。一方、リアルタイム交通事故回避システムの開発に関しては、交通シミュレーションソフトを導入し、首都高速4号新宿線の路線全体の交通状況を再現するためのプラットフォームの構築を行ったものの、交通量、速度、オキュパンシーなどリアルタイム交通事故予測システムの入力とする諸変数の再現性に関してはまだ課題を残している。これは研究協力者の就職に伴い、国際共同研究の機会を十分に確保できなかったためであり、当初の研究計画よりはやや遅れている状況にある。もっとも、対象路線の一部区間を対象に、交通事故に至りやすい交通状況から正常な交通状況に戻すための交通事故回避手段の検討、すなわち、最高速度規制、最低速度規制、オンランプのランプメタリングなどの検討を平行して実施しており、交通シミュレーションに関する交通量、速度、オキュパンシーなどの諸変数の再現性が確保され次第、リアルタイム交通事故回避システムの開発を進め、リアルタイム交通事故回避システムとリアルタイム交通事故回避システムを連動させたシステムの動作確認を実施し、当初の研究計画通りに研究目的達成することができるようになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、まず、交通シミュレーションソフトを利用した首都高速4号新宿線全体の交通状況シミュレーションの再現性、特に交通量、速度、オキュパンシーなどリアルタイム交通事故予測システムの入力とする諸変数の再現性を向上させる。そして、リアルタイム交通事故回避システムとリアルタイム交通事故回避システムを連動させた上で、システムの動作確認を行い、交通事故回避手段、例えば、最高速度規制、最低速度規制、オンランプのランプメタリング、などを実施した場合の交通状況の変化をシミュレーションする。また、交通事故回避手段の実施による交通状況の変化をリアルタイム交通事故予測システムにフィードバックし、交通事故に至りやすい交通状況から正常な交通状況に変化する過程に関して検討を行う。その際、交通事故回避手段の実施が研究対象路線全体に与える2 次的影響の評価を行い、評価結果を基に交通事故回避手段の選択を行うモデルを構築し、これをシステムに組み込む。以上を、研究対象路線に一定期間適用し、システム全体の交通事故の防止効果の評価を行い、これを実際に適用する際の課題に関して整理する。最後に、リアルタイム交通事故予測システムとリアルタイム交通事故回避システムの構築に関する知見をまとめ、土木学会や交通工学研究会などの関連する学会に論文として投稿し、報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の就職に伴い、研究協力者が来日する期間を短くせざるを得ず、国際共同研究の機会を十分に確保できなかったために次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究協力者が来日して国際共同研究を行うための費用、および研究報告書を作成する費用に用いる計画である。
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