最終年度においては、リアルタイム交通事故予測システムと連動したリアルタイム交通事故回避システムの構築を行った。都市高速道路の研究対象区間における交通状況が3分後に交通事故に至りやすい状況となる確率と回避手段により正常な状況となる確率を計算し、正常な状況となる確率の高い回避手段を明らかにするシステムの構築を行った。具体的な回避手段としては、速度規制、オンランプの流入規制を検討した。また、回避手段の実施による交通状況の変化は、交通シミュレーションソフトPTV-Vision VISSIMを用いて再現し、再現された交通状況をリアルタイム交通事故予測システムにフィードバックして、交通事故に至りやすい状況と回避手段により正常な状況となる確率を計算した。渋滞区間を対象としたケーススタディの結果、速度規制は安全性向上に効果を発揮せず、かえって安全性を損なう場合があることが示された。その一因は、速度規制のもつ対象区間の速度差を縮小する効果が、上流側では速度差の拡大を招き、交通事故に至りやすい状況を招くためであった。一方、流入規制はオンランプよりも上流側の本線での急減速を減少させ、正常な状況となる確率を高め、安全性の向上に寄与することが示された。 研究期間全体を通じて、リアルタイム交通事故予測システムに対しては、動的なベイジアンネットワークとEMアルゴリズムの導入により、利用データの空間的時間的範囲の拡大とパフォーマンスの向上、データ欠損に対する頑強性の向上を図ることができた。また、リアルタイム交通事故予測システムと連動したリアルタイム交通事故回避システムの開発は、先行研究がほとんどなく、本研究において開発したシステムが導入されれば、国内外の都市高速道路における交通事故を大幅に削減することが可能となり、都市高速道路の安全性、信頼性を著しく向上させることができると考えられる。
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