研究課題/領域番号 |
25420548
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
四辻 裕文 神戸大学, 先端融合研究環, 特命助教 (40625026)
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研究分担者 |
喜多 秀行 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50135521)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 路面表示 / 配列効果 / ミクロ交通流モデル / 先頭車ドライバー / 速度知覚 / 追突リスク / 予防安全 / ドライビングシミュレータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、先頭車ドライバーが路面側面表示の配列から速度を知覚して車速を決めるというメカニズムを内包したミクロ交通流モデルを開発し、配列の操作が先頭車ドライバーの知覚・行動を介して後続車の挙動に及ぼす影響を予測し、そのうえで、安全目標速度へと誘導が可能な路面側面表示に関する設計方法論を構築することである。 27年度に実施した研究の成果は次の通りである。 (1) カーブ緩和区間手前の直線区間に設置した表示の配列効果をHMMで分析した結果の頑健性を他のモデルで検証した。他モデルとして、SEMとRUMから構成される交通行動・認識構造統合モデルを適用した。結果、表示区間全体の序盤あるいは終盤で表示の間隔減少率を大きくした配列パターンが速度知覚の面からみると適しているという分析結果に頑健性が認められた。具体的には、後者(終盤で大きく)のパターンは概してカーブの曲線半径に依らず速度の過大知覚(知覚速度より実速度が高い)をもたらすので避けた方が望ましい反面、前者(序盤で大きく)のパターンは概ね曲線半径に依らず過小知覚をもたらすので比較的望ましい、という点が判明した。 (2) 配列パターンが先頭車ドライバーの速度認識と後続車の速度変化に及ぼす影響を理論的に考察した。表示上でカーブに接近する先頭車ドライバーの知覚速度の推移をポントリャギン最大値原理に基づいて定式化した。そのうえで(1)と同じデータを使ってパラメータを推定した。さらに、既存の後続車追従モデルと追突危険度指標を用いて、配列パターンと曲線半径に応じた先頭車挙動に関する推計結果から、追突リスクを推計した。結果、曲線半径が小さいときはパターンに因っては先頭車の急減速による後続車の追突が懸念された。しかしながら、(1)の前者(序盤で大きく)の配列パターンがその対策として有効であると期待される、という点を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
25年度計画では、(1)研究代表者らが開発した速度知覚・速度選択モデルを既存の追従モデルと組み合わせるために改良すること、(2)ドライビングシミュレーション実験を実施して、次年度以降の屋外実走試験における実験環境の設定に必要な予備データを収集すること、(3)路面側面表示の配列操作がドライバーの知覚を介して行動誘導をもたらすメカニズムを構築すること、を予定していた。26年度計画では、(4)先頭車の急減速がもたらす追従車の追突リスクの推定、(5)先頭車ドライバーの知覚・行動メカニズムを内包したミクロ交通流モデルの構築、(6)屋外実走試験に基づく路面側面表示の配列設計の検証、を予定していた。27年度計画では、(7)構築したミクロ交通流モデルを用いて、路面側面表示によって先頭車の速度誘導をおこなっても車群内で追突が起きないと期待される配列操作の条件の検証、(8)「先頭車ドライバーの知覚・行動メカニズムを内包した交通流理論の再構築と走行環境設計」として取りまとめ、を予定していた。 上記のうち、25年度には、(2)、(3)の一部、(4)の一部を実施した。26年度には、(1)、(3)の残り、(7)の一部を実施した。27年度に実施したのは、(5)、(4)の残り、(7)の一部である。 当初予定していた全体の研究実施計画からみると、(6)、(7)の残り、(8)が未完である。その結果、当初計画の遅延・変更による補助事業期間延長が生じた。その主な理由は、屋外実走試験の実施場所の変更を余儀なくされたことによる。なお、補助事業期間延長の期間内には、新たな実施場所で屋外実走試験を実施する計画である。このように、全体の研究実施計画に比べて実施時期が遅れており、現在までの達成度は「遅れている」と評価せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「現在までの達成度」で詳述したとおり、当初の26年度研究実施計画では屋外実走試験の計画とその実施が予定されていた。本研究において路面側面表示の配列は、その設置個所の特性、具体的にはカーブの曲率、に則して設計されることになる。ところが、屋外実走試験にあたって、多数のカーブ曲率を有するとともに実験中の交通状況も管理可能な実験サイトを見つけることは、非常に困難であった。むしろ、実験環境が管理可能な室内走行実験を通じて多数のカーブ曲率に対する路面側面表示の効果的な配列を推計しておいて、その推計結果の妥当性を屋外の実験サイトのカーブ曲率に対して検証するという方針が望ましいと考えた。 この方針に従い、26年度には、多数のカーブ曲率を用いた室内走行実験を実施した。加えて、25年度には、追従挙動データの収集に必要な屋外実走調査を首都高速道路と東名高速道路で実施したので、26年度には、そのデータとともに室内走行実験のデータを用いて配列効果の推計を実施した。当初の26年度計画では、この推計結果の妥当性を屋外の実験サイトで検証する予定であったが、26年度には屋外実走試験は実施できなかった。27年度には、室内走行実験を再び実施してデータを収集し、路面側面表示の配列の操作が先頭車ドライバーの知覚・行動を介して後続車の挙動に及ぼす影響を予測できるミクロ交通流モデルを開発して、路面側面表示によって先頭車の速度誘導をおこなっても後続車との追突が起きないと期待される配列操作の条件を数値シミュレーションで検討した。 今後は、屋外実走試験の新たな実験サイトとして国土技術政策総合研究所の試験走路を使用して補助事業期間延長の期間内に屋外実走行試験を実施する計画であり、室内走行実験データを用いた数値シミュレーションで得られた知見の妥当性を検証して研究の取りまとめへと進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
屋外実走試験の実施場所の変更を余儀なくされたので、当初計画の遅延・変更による補助事業期間延長が生じたため、当該助成金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
屋外実走試験の新たな実験サイトとして国土技術政策総合研究所の試験走路を使用する計画であり、翌年度分として請求した助成金と合わせて当該助成金を使用する計画である。
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