本年度は、政治学における討議理論の知見を踏まえて、社会基盤整備に関わる公的討論の規範的評価の体系やその方法論を理論的に検討した。その際、討論システムの概念を提示し、特定の討論を対象としたミクロ討論理論、討論システム全体を対象としたマクロ討論理論、ミクロ討論とマクロ討論の接合領域を対象としたミクロ=マクロ討論理論から構成される包括的な討論ガバナンス体系を提示した。その上で、それぞれの討論領域について、その基本原理や規範的要件、現実の討論を評価するための基準を明らかにした。また、公共プロジェクトに関わるメタ合意が、規範的メタ合意、認識的メタ合意、選好メタ合意という基準から構成されることを指摘し、その評価基準や評価方法を提案した。さらに、異なる討論組織体の間の相互作用メカニズムを主観的ゲーム理論を用いて分析し、地域学習や信頼形成を促進するための討論ガバナンスのあり方や政策的課題について検討した。
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