本年度は、公的討議におけるメタ合意を評価するための理論的・実証的方法論として、社会哲学の分野で提唱されている間主観性の概念に着目し、公的討議における間主観性の形成機構について理論的に検討した。その上で、現実の討議における間主観性の形成過程を明らかにすることを目的として、社会基盤整備に関わる対面形式の討議実験を行った。具体的には、大学生46名を対象にして、原子力発電所の再稼動を議題として2人1組(合計23組)で議論を行ってもらった。そして、実験前後の参加者の賛否意識や相手の意見に対する見解を比較することにより、間主観性の形成の程度を測定した。実験で得られたデータより、討議における発話の内容や視線・相槌等と間主観性の形成との関連性を調べ、間主観性の形成に影響を及ぼす要因について検討した。以上の理論的・実証的研究の結果を踏まえつつ、社会基盤整備に関わるメタ合意の形成を支援し、社会的意思決定の正統性を担保する上での討論ガバナンスの在り方やそれを評価するための体系的な枠組みを検討・提案した。
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