研究課題/領域番号 |
25420554
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
伊藤 歩 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312511)
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研究分担者 |
石川 奈緒 岩手大学, 工学部, 助教 (10574121)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 下水汚泥 / 有害物質除去 / ノニルフェノール / 重金属類 / 鉄酸イオン |
研究概要 |
本研究では、下水汚泥の緑農地利用促進のために、消化汚泥中の有害な有機化学物質と重金属類を除去するための新規システムの開発を目標とし、Fe(VI)酸イオンを用いた下水消化汚泥中のノニルフェノール(以下、NPとする)と重金属類の除去を検討した。 まず、基礎的知見を得るために、純水にNPを溶解した水試料(NP濃度:1 mg/L)について、NP除去に及ぼすpHと鉄添加量の影響、ならびにフェントン試薬との比較を検討した。試料のpHを2に調整した条件と比較して、pH無調整の条件ではFe(VI)酸イオンが1 mg/L以上でNPの除去率が90%に達し、より少ない鉄添加量でNPを除去できた。フェントン試薬と比較して、Fe(VI)酸イオンを利用する方法は同程度の鉄イオン添加量でpH低下と過酸化水素添加を必要とせずにNPを除去できた。ABTS法によりFe(VI)酸イオンを分析した結果、NPとFe(VI)酸イオンの減少が同時に生じたことから、NP除去はFe(VI)酸イオンの酸化反応によるものと考えられた。さらに、放射性同位体炭素(14C)で標識されたNPの分解を検討した結果、NPの一部がFe(VI)酸イオンによって完全分解されている可能性を示唆した。 次に、汚泥試料(NP含有量:600 μg/kg-DS、Cd含有量:1.7 mg/kg-DS)では、NP除去率はpH 2およびFe(VI)酸イオン1 g/Lの場合で30%程度であったが、pH無調整の条件ではFe(VI)イオン0.5 g/Lの場合で約70%であり、水試料と同様に、pH無調整の条件でNPを効率的に除去できた。一方、Cdの除去率はpHを2に調整した場合で約60%であるのに対して、pH無調整では5%未満であり、pH無調整の条件では重金属とNPを同時に除去することは困難であり、除去システムの再検討が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鉄(VI)酸イオンによるノニルフェノールの除去(pHや鉄添加量の影響)に関する知見が得られてきており、当初の目的を概ね達成できていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初はFe(VI)イオンの反応条件として、低pHが好ましいと想定していたが、ノニルフェノールの分解反応に対してはpH無調整の方が好ましく、汚泥中の重金属類との同時除去が困難であることが分かった。従って、双方を除去できる2段階のシステムを検討しながら、本研究を進めていく予定である。なお、ノニルフェノールの除去に関する研究計画の大きな変更は無い。
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