まず、放射性同位体炭素(14C)で標識されたノニルフェノール(NP)をFe(VI)酸イオンによって分解処理した後、その分解副生成物の生分解性を評価するために、OECDガイドラインによる有機物質の生分解試験方法に基づき、分解後の試料に活性汚泥を植種して培養を行った。無機化によって生じる気相中の14Cをシンチレーションカウンターによって分析した。その結果、今回の検討では分解処理の有無にかかわらず14C濃度は大きく増加せず、NPおよびNP分解副生成物の生分解性を確認することはできなかった。 次に、鉄酸カリウム塩の製造が試薬メーカーで中止になったことから、硝酸鉄、次亜塩素酸カリウム溶液および水酸化カリウムを用いた鉄(VI)酸カリウム溶液の湿式法による簡易的な生成とその生成物のNP分解能を評価した。自作の鉄(VI)酸カリウム溶液によってNPを分解できた。原料である次亜塩素酸もNPを分解できるが、鉄濃度によっては次亜塩素酸に比べて分解速度が速かった。更に、自作の鉄(VI)酸カリウム溶液を用いて紫外線(20 W殺菌ランプ、主波長:254 nm)との併用による水中のNP分解を検討した。鉄(VI)酸イオンと紫外線との併用によって鉄(VI)酸イオンのみの条件に比べてNPの分解速度が向上することが分かった。 以上の結果より、鉄(VI)酸イオンを用いて下水消化汚泥中のNPと重金属類を除去できるが、NPと重金属類の双方を除去する場合は中性条件でのNP分解を経た後に酸性条件で重金属類を溶出除去する2段階の処理が必要であることが分かった。NPの多くはFe(VI)酸イオンによって無機物まで完全には分解されず副生成物として残留していると考えられるが、その生分解性を明らかにすることはできず、今後の課題である。一方、鉄(VI)酸カリウムと紫外線の併用によって、より効率的にNPを分解できる可能性が示された。
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