研究課題/領域番号 |
25420556
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
赤尾 聡史 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30448196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物工場 / 農業廃棄物 / 抗酸化力 / トマト / カロテノイド |
研究概要 |
植物工場など土に拠らない集約的農業が広まった場合,埋戻しなど土地を利用し自家処理されてきた剪定物,0.5次加工残渣などの農業副産物の処理ニーズが高まると予想される.本研究では,これら農業副産物を資源として利用する検討,特に有用物質の回収・利用の検討を行っている. 平成25年度は,トマト剪定残渣および白ネギ地上部について,総ポリフェノール,総ビタミンC,スーパーオキシド消去活性(SOSA,抗酸化力),総カロテンおよびルテインの含有量分析を行った.その結果,これらの総ポリフェノール値とSOSA値は,他の植物と比べて特徴を有さなかった.一方,カロテノイドは,トマト剪定残渣について高い含有率が確認された.例えば,総カロテンについてはニンジン可食部の半分程度,ルテインについてはホウレンソウの半分程度の含有率であった.少なくともトマト剪定残渣については,カロテノイドによる抗酸化力が期待される. また,農業副産物を事業系一般廃棄物として処分した際の経営影響についても試算した.ここでは,植物工場でトマト,キュウリおよびナスが栽培された状況を想定し,施設園芸における経営状況に関するデータ(平成17年度から平成21年度)を用いて農業副産物処分費の農業所得に対する割合を求めた.事業系一般廃棄物の処分価格は,関東地方8都県の平均と分散を用いた(平成19年度).農業副産物の発生量は文献より求め,製品1 kgあたりの副産物発生量をトマト,キュウリおよびナスについて620 g,620 gおよび590 kgとした.農業副産物処分費の農業所得に対する割合は,それぞれ,9.4±0.5%,8.6±0.4%,7.2±0.4%と求まった.農業副産物処分費は利益を10%程度押し下げる効果を有し,かつ,近年事業系一般廃棄物の処分価格が上昇していることからも,農業副産物の有効利用の必要性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は,白ネギ地上部について,1)材料確保,2)材料前処理,3)ポリフェノール抽出および抽出条件の検討,4)ポリフェノール種の同定を計画した.結果として,白ネギ地上部にはポリフェノールが少なかったことから,工程3)および4)は踏襲せず,他の物質へと対象を変更し研究を継続した.対象物質は変更となったが,当初計画の4)までは概ね到達した.なお,対象物質変更の可能性は,申請書記載事項である.また,平成26年度実施予定であったトマト剪定残渣について,材料入手が行えたことから平成25年度中に白ネギ地上部と併せて検討を実施した. さらに,農業副産物を利用する動機についての検討,つまり,農業副産物を廃棄物として処分した際の経費的な影響の検討を平成25年度に実施した.この内容は,平成27年度に実施予定であったが,申請書記載の研究体制をうまく活用し,必要な情報が速やかに入手できたことから実施可能となった. 以上の点を踏まえ,白ネギ地上部が当初計画通りとならなかった点を割引いたとしても,平成26年度および平成27年度計画を前倒し実施し,次年度以降に他の材料の検討余地を確保したことから,計画は順調に進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降は,計画書にあるトマト剪定残渣のほか,当初計画以外の農業副産物について有効利用方法の検討を行う.対象とする農業副産物は,植物工場での栽培が期待される植物および鳥取県内での作付けが多い植物を中心に選定を進める.そのためにも,平成27年度に実施予定であった農業副産物の賦存量調査を前倒して平成26年度に実施する.また,有効利用の幅を広げる意味でも,農業副産物から得られる有用物質に関する既存研究の整理を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画段階とは異なる対象物質を検討することとなったため,内製化できる測定項目とは限らなくなり,材料準備費と外注分析費のバランスが多少崩れた.また,外注分析は,1件1件については基本的にコスト高であり,追加分析の発生などで手元に研究費を残しておく必要があった.また,材料費の準備についても同様である. 検討対象材料の拡大が見込まれるため,これら材料を対象とする外注分析を行う.この件は,申請書段階で記載事項であり,また,分析費などが上昇するものの前年度残額をうまく利用することで計画通り研究を進める予定である.前年度残額は,次年度直接経費に対して10%程度であり,研究進行上,また,経費執行上,著しく障害となるものではないと認識している.
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