植物工場など土に拠らない集約的農業が広まった場合,埋戻しなど土地を利用し自家処理されてきた剪定物,0.5次加工残渣などの農業副産物の処理ニーズが高まると予想される.本研究では,これらを廃棄物ではなく資源として利用する検討を行っている.具体的には,副産物中の有用物質の探索・同定ならびに副産物賦存量推計を計画している.平成25年度は,トマトおよび白ネギの残渣成分調査および副産物賦存量推計と副産物を一般廃棄物として処分した際の経営への影響の検討を実施した.平成26年度は,対象農作物残渣を広げ,ブロッコリー,スイカおよびきゅうりの残渣成分調査を実施した. 平成27年度は,1) 2ヵ年の結果から水溶性の抗酸化物質を多く含むと考えられるスイカとトマトの残渣のポリフェノール同定を行った.2) 新たにらっきょう残渣の成分調査を実施した.3) 従来からの農作物残渣について炭素,窒素およびリン含有量を求めた.1)について,スイカ残渣はクロロゲン酸類由来のカフェ酸(ごぼうと同程度)を,トマト残渣は同じくクロロゲン酸類およびケルセチン(たまねぎと同程度)を高い濃度で含有していた.2)について,らっきょう残渣中の総ポリフェノール,総ビタミンC,スーパーオキシドアニオン消去活性,総カロテンおよびルテインほかの含有量調査を行ったが,特記する特徴は有さなかった.3)について,バイオガス生成を目的とする場合は炭素/窒素比(C/N)が低いこと(トマトC/N=10,ブロッコリー残渣C/N=9など)からアンモニア阻害の懸念が指摘された.また,農作物残渣のリン含有量報告は稀であるが,対象作物についてこれらを報告できた(トマト残渣5.9 mg-リン/g-乾燥重量,きゅうり残渣10.6 mg-リン/g-乾燥重量).3ヵ年の調査結果を,それら可食部あるいは含有量が多いとされる作物可食部との成分比較として整理した.
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