研究課題/領域番号 |
25420557
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
尾崎 則篤 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50294541)
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研究分担者 |
金田一 智規 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10379901)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | SSO / 分流式下水処理場 / 降雨時流入 / PAHs / 多環芳香族炭化水素類 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は分流式下水道の汚水管に対して路面堆積物の流入がある可能性を検討することである.合流式下水道と異なり,分流式下水道は汚水管と雨水管が分離されている建前であり,汚水管に対して降雨に起因する雨天時流入があることについてはあまり注目されていなかった.しかし横浜市で独自に実施した雨天時流入に関する解析では,市内の一般的な分流式下水処理場でも相当程度の流入があることを明らかにし,また東日本震災の原発事故に起因する放射性物質の下水汚泥への侵入に関する調査でも,合流式下水道だけではなく分流式下水道においても一定程度放射性セシウムの流入を確認した.そもそも雨天時に相当の汚水流入量の増加があるということは現場においては周知の事実である.しかしそれによる路面堆積負荷の重大性を実証的に把握した事例はない.そこで本研究では路面堆積物負荷汚染物質としてよく知られている多環芳香族炭化水素類 (PAHs) を対象として,実際の分流式下水処理場においてその流入負荷の可能性を調査研究した.本研究は合流式下水道と異なり合流式下水道におけるCSOとまた別の,合流式下水道における雨天時越流水ともいうべきものである. 調査研究に基づき雨天時過剰流入負荷が1割程度であれば(これは一般的な分流式下水処理場の負荷の程度と考えられた)PAHsの過剰流入負荷は4割程度にものぼると考えられ,合流式だけではなく分流式下水道においてもその負荷は無視し得ぬものであることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査対象としたのは受入人口5万人の分流式下水処理場である.汚水流入量の連続データに基づいた雨天時流入水量解析および汚水受入地点における現地観測調査を実施した.時間単位の連続データに基づき,本対象域では雨天時の過剰流入水負荷は1%程度であった.また10年分程度の流入負荷経時変化(日単位)によって,当該処理場に経年的に過剰流入負荷率が増加していることを明らかにした.さらに雨天時帯に限れば強めの降雨では過剰流入負荷は倍程度になる.またPAHsの過剰流入負荷は実測を,9回の降雨に対して実施し,それにもとづいてまずPAHsにおいても無降雨時との差分より過剰な流入負荷があることが示された.そしてそれにもとづく推定により4%程度と推算された.当該処理区域ではその負荷は小さいが,これはたまたま雨水流入量が少ないためとも考えられる.先の横浜の事例などから過剰流入割合は10%にあがることも考えられ,その場合過剰のPAHsの寄与は37%程度と見込まれ,分流式下水道においても路面堆積物からの負荷が相当程度である可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
本研究により雨天時に過剰流入負荷が有意に存在することを明らかにした.今後の方策として,一種のネガコンとして,明らかに路面に堆積することがないと考えられるような汚染物質について同様の解析を実施し,得られた解析結果の確からしさについて検討していきたい.これらはこれまで採水した汚水サンプルを有機溶剤にて抽出した試料をアーカイブとして保管しているため,そのような試料を測定することによって新規に観測を実施することなく再解析することができると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本分析結果に基づき更に一種のネガコンとして,明らかに路面に堆積することがないと考えられるような汚染物質について同様の解析を実施し,得られた解析結果の確からしさについて検討していきたい.これらはこれまで採水した汚水サンプルを有機溶剤にて抽出した試料をアーカイブとして保管しているため,そのような試料を測定することによって新規に観測を実施することなく再解析することができると考えている.
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次年度使用額の使用計画 |
分析項目は現在PPCPsのひとつとして知られている多環ムスク類(OTNE, HHCB, AHTN),抗菌剤であるtriclosanである.分析方法はすでに確立しており,確立した分析方法に基づき実施する.これらの物質には一般に路面炊き石仏などには含まれていないと考えており,雨天時の過剰負荷はないであろうと考えている. 分析試料はこれまで実施した採水試料である.試料は100程度存在し,優先度を定めて順次実施していく予定である.
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