本研究の目的は分流式下水道の汚水管に対して路面堆積物の流入がある可能性を検討することである。合流式下水道と異なり,分流式下水道は汚水管と雨水管が分離されている建前であり,汚水管に対して降雨に起因する雨天時流入があることについてはあまり注目されていなかった。しかし横浜市で独自に実施した雨天時流入に関する解析では,市内の一般的な分流式下水処理場でも相当程度の流入があることを明らかにし,また東日本震災の原発事故に起因する放射性物質の下水汚泥への侵入に関する調査でも,合流式下水道だけではなく分流式下水道においても一定程度放射性セシウムの流入が確認された。そもそも雨天時に相当の汚水流入量の増加があるということは現場においては周知の事実である。しかしそれによる路面堆積負荷の重大性を実証的に把握した事例はない。そこで本研究では流入負荷の可能性を調査研究した。本研究は合流式下水道と異なり分流式下水道における雨天時の市街地流入を調査するという内容である。 調査研究に基づき雨天時過剰流入負荷が一割程度であれば(これは一般的な分流式下水処理場の負荷の程度と考えられた)PAHsの過剰流入負荷は4割程度にも上ると考えられ,合流式だけではなく分流式下水道においてもその負荷は無視し得ぬものであることが示された。また本対象サイトを含む複数の下水処理場から発生する下水汚泥とで毒性試験によって比較したところ,処理場によって汚泥の毒性は大きく異なった。すなわち本サイトのような市街地を含む地域では毒性評価値がかなり高かった。これはこれらの毒性が市街地流入に起因するものではないかと示唆されるものであり,今後の課題となるものである。
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