本研究では、濃縮導入した環境臭気をガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)およびオルファクトメトリー(嗅覚を用いた測定)で同時分析することによって、環境臭気評価方法および発生源探索方法を確立することを目的としている。平成25年度は、まず環境臭気の濃縮導入方法として、キュリーポイントインジェクター(CPI)による加熱脱着法および固相マイクロ抽出法(SPME法)の比較検討を行った。これらは、どちらも操作が簡便に行え、濃縮導入にかかる時間が短いという特徴がある。代表的な悪臭物質の一つであるスチレンを濃縮後、それぞれGC/MSによる分析を行った結果、両方法ともにスチレンの嗅覚閾値レベルの濃度(0.03ppm)が分析可能であることが分かった。また、CPIによる加熱脱着法の方がSPME法よりも低濃度域で分析が可能であることが明らかになった。平成26年度は、新たな濃縮導入方法としてシリカモノリス濃縮抽出法(MMSE)を用い、最適な分析条件の探索を行うとともに、SPME法による環境臭気の分析を行った。MMSEは、ヘッドスペースガスを吸着捕集した後、溶媒抽出を行うものであり、操作が簡便で繰り返し分析が可能であるという特徴がある。スチレンを用いた実験の結果、MMSEでは、活性炭を含む捕集剤をジクロロメタンで抽出した場合に最も高感度で分析が可能であった。しかし、平成25年度のSPME法の結果との比較では、SPME法の方が感度の面で優れていることが分かった。平成27年度は、GC/MSににおい嗅ぎを組み合わせたGC/MS-O分析における試料の嗅ぎ方や感覚的評価の一つである臭気強度の回答のしかたなどの一般的手順について検討し、濃縮導入方法の検討と合わせて研究全体の取りまとめを行った。
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