研究課題/領域番号 |
25420562
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
矢口 淳一 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80342450)
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研究分担者 |
山本 歩 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (60523800)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大腸菌 / DNA / VBNC状態 / PMA試薬 |
研究概要 |
平成25年度は、不活性な大腸菌が大多数を占め濃度も低い水環境試料でも生理的活性のある大腸菌のみを定量できる高感度のPMA-PCR検出法を開発するため、メンブレンフィルタでろ過濃縮した大腸菌にPMA-PCR法を適用して、水環境中に存在するVBNC状態を含む活性のある大腸菌を定量し、従来法と比較しながら大腸菌の挙動を調査した。 先ずPMA処理条件を検討した結果、PMA添加濃度50μM、PMA処理時間5分間、ハロゲン光照射時間5分間及びPMA添加回数1回とする方法がPMA処理の最適条件であると判明した。これらの条件を用いてPMA-PCR法をメンブレンフィルタ法に適用した場合の検出感度について検討した結果、無処理大腸菌濃度の100倍まで熱処理した大腸菌が存在してもPMA-PCR法を適用可能なことが分かり従来方法より大幅に感度が改善された。 メンブレンフィルタを用いたPMA-PCR法を八戸市周辺の6つの水域サンプルに適用し、水環境中の大腸菌数を計測して従来法の計数結果と比較した。PMA-PCR法の計数値は、PCR法とMPN法の大腸菌数及び糞便性大腸菌群数の中間に位置し、水環境中では多くの大腸菌がVBNC状態で存在していることが示された。PCR法、PMA-PCR法およびMPN法にて計測された大腸菌数を使用してVBNC状態の全大腸菌数に占める割合を計算した結果、2.33%~87.9%となった。またPMA-PCR法による大腸菌の計数値は、MPN法とPCR法によって計数された大腸菌数との間にそれぞれ高い相関性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、高感度のPMA-PCR検出法の開発、メンブレンフィルタへのPMA-PCR法の適用およびLED光源を用いた照射方法の開発を並行して進める計画であったが、効率的に実験を進めるためハロゲン光源を用いるメンブレンフィルタへのPMA-PCR法の適用から取り組むことにした。その結果、メンブレンフィルタを用いたPMA-PCR法では従来より大幅に感度が改善され、水環境中の大腸菌の動態調査にも適用できた。しかし一部の水域サンプルでは、PMA-PCR法とPCR法の計数値がMPN法などの培養法を下回るケースが見られ、大腸菌の水環境中の濃度はメンブレンフィルタでろ過濃縮してもかなりPCR法の検出限界に近く、測定誤差が大きくなり測定が難しい場合があることが分かった。そこで今後はPCRそのものの感度の改善に取り組む必要がある。また検出限界付近では、ハロゲン光照射のサンプルへの影響も大きいのでLED光源の使用が適切だと考えられる。 当初の計画とは異なる対応となったが、このように平成25年度の研究成果によってハロゲン光源によるPMA-PCR法の可能性と限界を明らかにでき、今後の本研究の方向性を確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、LED光源を利用したPMA-PCR法の確立を中心テーマとして取り組む。ハロゲン光より発熱量が大幅に少ないため、長時間の照射やサンプルへの悪影響の低下が期待される。先ず照射方法について検討し、LED光源の種類、照射距離、照射時間について決定し実験装置を組み立てる。次にLED光源を用いた場合のPMA処理最適条件を検討する。PMA濃度、PMA添加方法、LED光源照射時間について最適値を求め、LED光源を利用したPMA-PCR法を確立する。それぞれの実験では純粋培養した大腸菌を材料に実施し、水環境中の指標細菌の動態調査につなげるためメンブレンフィルタでろ過濃縮した大腸菌にPMA-PCR法を適用する。また昨年度の研究で水環境中ではPCR法そのものの感度改善が必要であることが知られたので、使用プライマーやDNA合成酵素、PCR条件についても検討を加え、検出限界を求める。 水環境中の動態調査は、LED光源を利用したPMA-PCR法が確立でき次第取り掛かる。環境サンプルではPCRの阻害が問題となるので、DNA合成酵素やPCR条件を阻害が起きないように見直す必要が生じるかもしれない。今年度の動態調査は八戸周辺の河川と海域などで実施する予定である。LEDを利用した照射方法の検討については山本(八戸高専)が担当し、その後のPMA-PCR法の確立と水環境中の動態調査については金子(八戸高専)が、矢口の指導のもと実際に研究開発を担当する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定では、高感度のPMA-PCR検出法の開発、メンブレンフィルタへのPMA-PCR法の適用およびLED光源を用いた照射方法の開発を並行して進める計画であったが、効率的に実験を進めるためハロゲン光源を用いるメンブレンフィルタへのPMA-PCR法の適用から取り組むことにした。そのため次年度使用額が僅かに生じた 平成26年度は、ハロゲン光より発熱量が大幅に少なく長時間の照射やサンプルへの悪影響の低下が期待されるLED光源を利用したPMA-PCR法の確立に中心テーマとして取り組む。そのため次年度使用額は主にLED光源を用いた照射装置の作成のため使用する。
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