研究課題/領域番号 |
25420562
|
研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
矢口 淳一 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80342450)
|
研究分担者 |
山本 歩 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (60523800)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 大腸菌 / DNA / LED光源 / PMA試薬 |
研究実績の概要 |
DNA染色試薬PMAとリアルタイムPCRを組み合わせたPMA-PCR法により生存可能な細菌のみを計数することが可能となったので、平成26年度には、サンプルのPMA処理に従来用いられていたハロゲン光源の代わりにLED光源を使用してPMA処理を行い、リアルタイムPCRと組み合わせてPMA-PCR法の最適条件を検討した。LED光源を使用することで、サンプルの温度上昇が抑えられる。 先ず、PMA-PCR法の検出感度に対する増幅対象塩基長の影響を検討するため、遺伝子コピー数と閾値サイクル数の関係を求め、さらに無処理の大腸菌と熱処理した大腸菌の混合比率を変えてPMA-PCR法の効果を検証する実験を行った。また最適なLED光照射時間を決定するためLED光照射時間実験を行った。大腸菌uidA遺伝子について、3種類のプライマーセットの遺伝子コピー数と閾値サイクル数の関係を検討した結果、増幅対象塩基長126bpのプライマーセットが検出に最も適していた。LED光源を用いた場合、PMA-PCR法の最適なLED光照射時間を検討した結果、照射時間15分間が最適であった。この条件を用いてPMA-PCR法の検出感度を検討し、無処理大腸菌濃度の10倍まで熱処理した大腸菌が存在してもPMAの効果があることがわかった。またPCR反応試薬、サルコシル酸塩の添加などについても検討したが感度の改善につながる効果は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サンプルのPMA処理には昨年までハロゲン光源を用いていたが、サンプルの温度上昇などの問題点があった。そこでハロゲン光の代わりにLED光源を使用してPMA処理を行い、リアルタイムPCRと組み合わせてPMA-PCR法のの最適条件を検討した。その結果LED光源を使用しても十分PMA処理の効果が認められ、PMA-PCR法によって生存可能な大腸菌と死滅した菌体を分別できることが分かった。 しかし検出感度の改善については、増幅対象塩基長の影響を検討するため大腸菌のuidA遺伝子のプライマーセットを83~240bpの範囲で3種類作成して実験したが、この塩基長の範囲ではPMA-PCR法の感度に大きな影響は認められなかった。また生存可能な細菌を分別するのに効果があると報告されているサルコシル酸塩を0.5%の濃度範囲までサンプルに添加したが、逆に一部の生存可能な細胞を検出不能にしていることが分かった。検出感度の向上のためには、ろ過濃縮量の増加など実験操作等による改善が必要かもしれない。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度には、PMA試薬には波長460~470nmの光線が有効であることから青色LEDを利用したPMA-PCR法の開発を行う予定である。PMA濃度やPMA添加方法さらには補助剤の添加、照射方法では、照射距離、照射時間について検討し青色LEDを使用した場合のPMA処理の最適条件を求める。それぞれの実験では始めに純粋培養した大腸菌を材料に実施し、次に実際の水環境試料に適用して改良していく。水環境中の動態調査では、八戸周辺の河川、湖沼、海域などで実施する予定である。PCR法によって死滅した菌を含むすべての大腸菌、青色LEDを利用したPMA-PCR法を使用してVBNC状態を含むすべての生存可能な大腸菌、さらにMPN法、メンブレンフィルタ法などの培養法によって培養可能な大腸菌を計数して比較検討する。 最後に得られた調査結果から水系病原性細菌の感染リスクについて解析し、現行の微生物学的基準を検証すると共に上下水道などのプロセスの改善策や再利用水の処理方法などを提案する。リスクの再評価については、細菌動態調査が終わり次第取り組む。研究体制は水環境の細菌動態調査については矢口と金子が、青色LEDを利用したPMA-PCR法の開発と感染リスクの評価については、矢口と山本が評価し、研究全体を矢口が総括する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度中に青色LEDランプあるいは照射装置も購入する予定で機種選定していたが、購入予定だった機種が突然製造中止となったため購入できず、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度青色LEDランプあるいは照射装置の購入に使用する。
|