研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,偶発作用の一つである突発衝撃荷重作用時における構造物の動的挙動特性や部材損傷レベルを実験的・数値解析的側面から把握し,強靭性やリダンダンシーをもつ安全・安心な構造物の設計法の確立に向けた検討を行うものである。本研究では,特に部材損傷評価レベルの評価手法として,ファイバー要素を用いた解析手法に着目し,その妥当性の検討を行った。本年度は昨年度実施した純スパン長の異なるH形鋼梁(純スパン長:2, 3, 4m)の静載荷および衝撃荷重載荷実験を対象に,ファイバー要素を用いた数値解析を実施し,載荷点変位および支点反力に着目してその適用性に関する検討を行った。解析対象の実験は,静載荷実験の他,質量300kgの鋼製重錘を所定の目標入力エネルギーに対応した高さより,重錘を梁材のスパン中央に自由落下させた全14ケースである。ここでは,(1)より簡易なモデルにおける再現性を検討するために,H形鋼梁を棒要素でモデル化した2Dモデル,および(2)フランジとウェブを忠実にモデル化することにより,各部の局所変形を含めた挙動の再現性を検討するための3Dモデルの2種類のモデルを作成し,検討を行った。 その結果,(1)小型H形鋼梁における要素分割長は,2Dおよび3Dモデルにかかわらず,梁高の0.5倍程度とし,減衰定数を5%とすることにより,衝撃荷重載荷位置における梁の応答変位を10%以内の誤差で再現可能であること,(2)支点反力に関しては,最大応答値を過小評価する傾向にあるものの,その波形性状を大略再現可能であること,(3)スパン長が短い場合や局部変形が卓越するような場合には,3Dモデルの方が2Dモデルに比較して,解析精度は若干高いこと,等を明らかにした。 以上より,偶発作用を受けるRC/S造構造物の部材損傷評価手法として,ファイバー要素を用いた解析手法が適用可能であることを確認した。
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