1. せん断降伏型靭性方杖部材の力学モデルの構築 申請者が提案する「せん断降伏型靭性方杖部材」の力学挙動について、繰り返し載荷実験を実施してその結果を詳細に分析し、同方杖部材の力学的挙動を表現できる力学モデルを構築した。具体的には、せん断降伏するストラット部を曲げせん断変形する線材に、局所的な曲げ変形を示す方杖部材フランジ部を回転バネにモデル化し、それらを連結して方杖部材の全体的な軸力-軸方向変形関係を表現できる力学モデルを提案した。 2. せん断降伏型靭性方杖部材の低サイクル疲労性能検証法の提案 同方杖部材の繰り返し載荷実験においては、最終的にはせん断降伏するウェブ内のストラット端部にき裂が発生して方杖部材が耐力を失うような終局状態を示した。このような終局状態に至るまでに、方杖部材がどの程度の塑性変形能力(エネルギー吸収能力)を発揮できるのかを解明しておくことが、今後の実用化に向けて重要である。そこで、鋼材レベルでの低サイクル疲労試験結果を参照することで、ストラット端部のひずみ履歴から靭性方杖部材の低サイクル疲労性能を推定できるのではないかと考え、靭性方杖部材付き部分架構の繰り返し載荷実験で得られた靭性方杖ストラット部のひずみ実測値を分析し、靭性方杖部材の終局時までの累積損傷度を算定した。その結果、ストラット端部の2軸ひずみ状態から得られる相当ひずみと鋼材の低サイクル疲労曲線から靭性方杖部材の低サイクル疲労性能が精度良く推定できることが確かめられた。さらに、実用上はひずみ実測値を得ることが困難であることから、方杖部材または架構の変形から方杖部材内の局所的なひずみを推定する評価式を載荷実験結果に基づいて導出し、方杖部材・架構水平変形による低サイクル疲労性能検証法を提示した。
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