研究課題/領域番号 |
25420574
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小林 克巳 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40150297)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 建築構造・材料 / 鉄筋コンクリート / 開孔梁 / 人通孔 / 開孔周囲補強筋 / せん断終局耐力 / 応力伝達メカニズム |
研究実績の概要 |
開孔上下に形成する2段梁配筋、開孔脇の縦補強筋、斜め補強筋のせん断力伝達メカニズムを表す力学モデルと破壊条件に基づいて、終局せん断耐力算定式と計算手順をまとめた。過去に行った実験による終局せん断耐力と計算値の比はほぼ一定となり、一定の余裕率をもって実験結果を再現できることが分かった。 さらに、過去の実験による知見も踏まえて、開孔上下2段梁配筋量、開孔脇の縦補強筋量とその位置、斜め補強筋量を決定していく手順をまとめ、それに従えば意図するせん断性状が得られることを実験によって確認したが、詳細な実験データの解析は未完了である。 また、提案した力学モデルによれば、開孔周囲せん断耐力に及ぼすせん断スパン比の影響を力学的・理論的に説明できる可能性があることから、本研究計画の発展的な範囲として、開孔周囲せん断耐力に及ぼすせん断スパン比の影響に関する実験を実施した。詳細な実験データの解析は未完了であるが、力学モデル上の力のつり合い条件が同じであれば、せん断スパンの大きさに関係なく同じせん断耐力が得られることを確認した。これによっても、本研究成果としての力学モデルと破壊条件に基づく終局せん断耐力算定式と計算手順の妥当性も確認した。 実用的には、経験式である終局せん断耐力式(広沢式)が用いられている。設計に対して安全側の評価を与えることは確認されているが、本研究成果としての力学モデルと破壊条件に基づく終局せん断耐力算定式に基づけば、コンクリート強度が小さい場合、開口上下2段梁の肋筋量が少ない場合、計算上の開孔補強量を、開孔際縦補強筋量を多くすることによって確保しようとする場合に、設計上の余裕度が小さくなることを予測した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開孔上下の2段梁のトラス機構、開孔際縦補強筋につり合う開孔上下にできるローカルアーチ機構、斜め補強筋でできるトラス機構で構成される力学モデルと破壊条件に基づいて、終局せん断耐力算定式と計算手順をまとめることができている。実験による終局せん断耐力と計算値の比はほぼ一定となり、さらに過去の実験による知見も踏まえて、開孔上下2段梁配筋量、開孔脇の縦補強筋量とその位置、斜め補強筋量を決定していく配筋設計手順をまとめ、それに従えば意図するせん断性状が得られることを実験によって確認できたので、本研究の目的は達成できたと判断している。ただし、27年度に実施した実験工程に遅れが生じたため、データの詳細な解析だけが未完了であり、最終研究成果のまとめが終了していない。 また、当初の研究計画には含まれていないが、提案した力学モデルによって開孔周囲せん断耐力に及ぼすせん断スパン比の影響を力学的・理論的に説明し、実験によって確認することもできたので、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
27年度の実験の測定データを詳細に解析し、せん断力伝達モデルと対応していることを確認して研究成果を取りまとめる。研究成果を情報発信する目的をより精緻に達成するために、日本建築学会および第16回世界地震工学会議で発表するための論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
RC造大開孔梁試験体を購入する予定であったが、25年度および26年度に購入していた業者が27年度に廃業してしまった。25年度からの実験の一貫性から、他の業者から購入することが困難であり、自分で大開孔梁試験体を製作することとしたため、試験体購入費として予定していた予算に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度に、試験体製作に多くの時間を要し、大幅な実験実施工程の遅れが生じた。本研究計画の発展的な範囲としての開孔周囲せん断耐力に及ぼすせん断スパン比の影響に関する実験も含めて、すべての研究計画項目を終了できたが、27年度の実験データの解析だけが間に合わず、研究実施期間延長の承認を受けた。未使用額は、27年度の実験結果の解析と研究成果のまとめを行うための経費、および研究成果を情報発信する目的をより精緻に達成するために、28年度日本建築学会大会および第16回世界地震工学会議で研究成果を発表するための経費に充てたい。
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