研究課題
拡散波動場における微動の水平上下スペクトル比の新しい解釈方法に基づき,水平成層地盤のみならず不整形地盤を含む地盤構造の同定手法の開発を行うことを目的に,観測データから水平上下スペクトル比の方位依存性を定量的に判定する指標を導くとともに数値解析による理論水平上下スペクトル比の計算手法について検討を行った。これまでに蓄積した微動観測データを整理したところ、水平上下スペクトル比に方位依存性が顕著に見られる地点があった。微動の水平上下スペクトル比の方位依存性を定量的に推し量る指標として、方位依存パワーという指数を定義し、方位依存性の定量的指標として使用できることを確認した。方位依存性が見られる地点のうち、面的に観測した微動の水平上下スペクトル比から地盤の不整形性が示唆された港湾地域強震観測網の小名浜観測点において、詳細な検討を行った。方位依存パワーが最も大きくなる方角を調べたところ、観測点によって方位依存パワーが顕著となる方角が2方向あり、それぞれの方角が地盤の不整形性を示すものと仮定して二次元不整形地盤モデルを構築した。平成25年度には京都大学宇治キャンパス周辺地域を模擬した二次元基盤構造モデルを用いた数値解析により得られる理論水平上下スペクトル比が観測水平上下スペクトル比を定性的に再現できることを示した。平成26年度~27年度には、小名浜観測点において構築した二次元不整形地盤モデルを用い、観測記録の水平上下スペクトル比に見られる方位依存性を定性的に再現することに成功した。このことから、宇治キャンパスの場合は堆積層下部の深さ数百mの基盤形状が水平上下スペクトル比の形状に影響を与えているのに対し、小名浜観測点では厚さ数m~10m程度の表層地盤の不整形性が影響していることがわかった。一方、大阪府南部や京都市域の観測微動水平上下スペクトル比に基づき地下構造モデルの同定を行った。
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日本地震工学会論文集
巻: 第15巻,第6号 ページ: 60-76
http://doi.org/10.5610/jaee.15.6_60