研究課題/領域番号 |
25420582
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉岡 智和 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (40304852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 方立て壁 / 摩擦ダンパー / 制振デバイス / 損傷制御 |
研究実績の概要 |
今年度(2014年度)も,前年度に引き続き,簡易な摩擦ダンパーを用いたRC制振方立て壁の開発を目指し,次の水平加力実験を実施した。 試験体は,コンクリート系共同住宅に用いられるRC方立て壁(壁厚150mm,壁高さ1976mm,壁長さ1000mm)を想定し,それを上下に分割した上で鋼板(PL9)で連結し,その下部は下部方立て壁に機械式定着した8-φ19(PC鋼棒)で摩擦接合(ボルト張力125kN/本を導入)し,鋼板上部は摩擦ダンパーとして動作するように長孔(φ30×610mm)を設け,上部方立て壁に機械式定着した4-φ19(PC鋼棒)で締め付けた実大試験体とした。実験条件として,(1)方立て壁の損傷・破壊状況を確認するため,前年度に比較し大きなコンクリート強度(Fc=36N/mm2)を有し,摩擦ダンパー部の締め付けボルト張力を10,20,40,60kN/本と変更した試験体(3体,40kN/本は10kN/本を導入した試験体を再利用),及び(2)連結鋼板を耐食性に優れたステンレス鋼板(SUS304)に変更し,SS400材を連結鋼板に使用した前年度の実験結果と比較するため摩擦ダンパー部の締め付けボルト張力を32kN/本とした試験体(1体)の水平加力実験をそれぞれ実施した。加力方法,及び計測方法は昨年度と同様とした。 実験結果として次の事項を確認した。(1-1)ボルト張力10kN/本では概ね損傷を抑制し,ボルト張力20kN/本では修復が容易な損傷は生じるものの,エネルギー吸収能力に富む荷重変形復元力特性(せん断力約40kN,90kN)をそれぞれ発揮した。(1-2)ボルト張力40kN/本以上では,面外へ折れ曲がる現象により耐力低下が生じた。さらに,(2)ステンレス鋼板を用いるとSS400材に比較し,繰り返し加力時にボルト張力の低下に起因するせん断力の低下が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2014年度)は,前年度の成果をもとに一部改良した簡易な摩擦ダンパーを適用した実大RC方立て壁試験体4体を計画し,その水平加力実験を行った。その成果として,摩擦ダンパーの負担する摩擦力と方立て壁の荷重変形復元力特性と損傷状況の関係を把握し,当該RC制振方立て壁の最終破壊形態を確認でき,当初想定した本年度(2014年度)の研究計画を概ね達成できた。さらに,摩擦ダンパー部の連結鋼板への耐久性に優れるステンレス鋼板の適用可能性も確認した。
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今後の研究の推進方策 |
助成研究の最終年度は,これまでの成果をもとに,RC方立て壁のアスペクト比を小さく(2.0未満)することで,RC方立て壁の損傷を抑制しつつより大きな摩擦力を負担できることを確認する目的の水平加力実験を実施することとしている。得られた実験結果は随時学会発表等を行うとともに,実験結果を基に当該RC制振方立て壁の荷重変形復元力特性の評価方法をとりまとめ発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試験体の製作,加力装置の組み替え等の実験準備補助のため計上した学生アルバイト謝金が不要となったため。不要となった理由は,当該助成研究を主たる研究テーマとして担当した修士学生,学部学生のみで準備作業が行えたことによる。加えて,損傷が極めて小さい一部試験体を再利用したため試験体製作費を一部減額することが可能であった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に実施予定の追加実験のための試験体の製作費に充当する。
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