平成27年度においては,BIM(Building Information Modeling)と粒子法の一種であるMPS (Moving Particle Semi-implicit) 法を援用してコンクリートの充填シミュレーションを行う手法を開発した。具体的には,過密配筋箇所をBIMにより3次元モデル化し,その形状データを用いてMPS法にてコンクリートの充填シミュレーションを行うことを可能にした。従来は経験的に判断していた過密配筋箇所でのコンクリートの充填性を定量化および可視化することで,コンクリート工事の合理化に寄与するものと思われる。 本研究期間の平成26年度には,材料分離モデルとその解析法の提案とバイブレータの振動伝播状況の解析法の提案を行った。これらの研究は複合材料であるコンクリートの打込み時の課題である材料分離問題と,施工において多用される棒状バイブレータによる振動締固めを評価する上で有用な手法となりうる。 また,本研究期間の平成25年度には,セメントペーストにおける水和やセメント粒子形状・分布および凝集がレオロジー定数に与える影響を実験的に明らかにするとともに,温度上昇と時間経過ともにレオロジー定数が変化することを実験的に示した。この実験結果とセメントペースト流動特性からコンクリートの流動特性を推定する筆者らの手法を用いて,暑中環境下におけるスランプの低下を解析的に表すことができた。 本研究期間の3年間で,①コンクリートのレオロジーに関する研究,②コンクリートの材料分離および振動伝播を考慮した流動解析法の開発,③BIMとMPS法を援用したコンクリート充填シミュレーション法の開発を行い,コンクリートの施工設計法確立のための一助とすることができた。
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