本研究は鉄筋コンクリート(RC)造ピロティ架構を対象として、地震時にソフトストーリーに変形が集中しやすいことを利用して損傷集中制御を図ることを目的とする。研究期間の最終年度に当たる平成27年度は、前年度までの成果に基づき、最適なダンパーを決定するために必要となる地震時最大応答推定について、ピロティ柱がせん断降伏する場合を想定したサブストラクチャ・オンライン実験を実施した。またエネルギー吸収を図るダンパー部に関しては、ピロティ空間の利便性を鑑みて柱軸方向に磁気粘性流体(MR)ダンパーを設置した際の制御効果を数値解析によるパラメトリックスタディにより検討した。 平成27年度は観測波5波、模擬地震波1波の計6波の地震応答を数値シミュレーションにより検討した。またMRダンパーに発揮させる減衰力をパラメータとして、最大応答を最小化する最適ダンパー力の検討を実施した。その結果、ダンパーを柱軸方向に設置した場合は、最大限のダンパー力を常に発揮させるパッシブ・オンの状態では加速度応答低減効果が著しく低く、これは架構の軸挙動を拘束することによる固有周期の短周期化によることが明らかになった。一方、架構の挙動に応じてダンパー力のオンとオフとを切り替える制御を行った場合は、短周期化傾向が現れず、ダンパー力の増大により減衰能の向上する結果となり、本提案の優位性が確認できた。ただし、ダンパー力をオンとする際に、過大なダンパー力を発揮させると、応答が偏る傾向があり応答低減効果が低下することが確認できた。 以上より、ピロティ架構の全体曲げ変形挙動に着目して柱軸方向に可変ダンパーを設置することで、ピロティ空間の利便性を損なわない地震応答低減手法を提案することができたが、ピロティ柱がせん断降伏するような場合のダンパー力の設定方法については、地震時最大応答推定手法において課題が残された。
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