研究課題/領域番号 |
25420589
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
永野 正行 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60416865)
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研究分担者 |
肥田 剛典 東京理科大学, 理工学部, 助教 (60598598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超高層集合住宅 / 室内被害 / 微動 / 振動解析モデル / 振動台搭乗実験 |
研究概要 |
本年度は2011年東北地方太平洋沖地震(以降、3.11本震と称す)時における超高層集合住宅の建物・人的被害の調査を実施し,即時被災度判定システム構築に向けたデータベースに資する成果が得られた。 ① 3.11本震時における超高層集合住宅の被害状況を把握するため、大地震時における超高層集合住宅の実被害データベースを整理した。低層から中層にかけて内部被害が多く発生したことを明らかにし,応答層間変形と被害状況の関係を把握する上で貴重なデータが得られた。 ② 3.11本震時に強震記録が得られた建物の設計時の振動解析モデルを収集し分析した。この結果,設計用せん断力で規準化された降伏耐力は1.5前後の値をとること,線形時の固有モードはほぼ同じとなることがわかった。複数会社により評価された振動解析モデルを横並びで対応することはほとんどなされておらず,国内における超高層集合住宅の標準モデルの構築および今後の被害推定を行う上で欠かせない情報となる。 ③ 強震観測を行っていない建物の被災度判定を簡便にするアプローチとして微動計測に着目し,現時点で累計27棟の超高層集合住宅を対象に計測を行った。伝達関数から推定した各建物の現時点の固有振動数は設計時振動数と概ね一致することが分かった。これらのデータは,今後首都圏に南海トラフなどの巨大地震が発生した後の,建物の被災度を判定する上で重要となる。 ④ 大地震時における超高層集合住宅居住者の体感や行動難度を把握するため,3.11本震時に超高層集合住宅で得られた記録を用いて振動台搭乗実験を実施した。アンケート調査から最大加速度が大きいほど行動に支障が生じ,不安度が大きくなる傾向がみられた。併せて頭部の加速度を計測しており,超高層集合住宅における地震時の揺れと体感の関係を把握するための基礎データが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の主な達成目標は,2011年東北地方太平洋沖地震(以降、3.11本震と称す)時における超高層集合住宅の実被害データベース作成,地震応答解析による非線形シミュレーション解析等であった。本年度は,3.11本震時における超高層集合住宅の実被害データベースを整理し、また3.11本震時に強震記録が得られた建物の設計用振動解析モデルを収集分析し,その振動解析を実施した。本年度ではこれに加え6棟の超高層集合住宅を対象に微動計測を実施し、微動に基づく建物の被災度判定に有用な基礎データを取りまとめると同時に、振動台搭乗実験を実施しアンケート調査や頭部加速度の計測から大地震時の揺れと体感に関する基礎データを得た。被災度判定システムの構築に向け多様なデータを収集しており、当初の計画以上に研究が進んでいると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策として、RC造超高層集合住宅の建物安全性を居住者に即時的に通知し、かつ地震発生後の迅速な広域的復旧計画策定に資する総合的ヘルスモニタリングシステムの構築を目指す。具体的には,強震観測で得られた地震データを用いて、建物の損傷を把握することができる手法の高精度化を目指す。また地震終了後の建物動特性の変化を利用した微動計測を引き続き実施するとともに,3次元立体フレームモデルなどを用いたシミュレーション解析により今後の大地震発生時の建物損傷予測の可否を検討する。次年度には、2011年東北地方太平洋沖地震時における超高層集合住宅の構造、室内被害や強震記録のシミュレーション等に関する公開研究フォーラムを開催し、本研究で得られた成果を対外発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はデータベースの収集・整理、建物微動計測に注力したこと、フレーム解析ソフト購入を来年度に変更したため、当年度使用額が予定よりも小さくなった。 次年度は本年度購入予定であったフレーム解析ソフトを追加購入し、大地震時における超高層集合住宅の被災度推定の精度を高める。また2011年東北地方太平洋沖地震時における超高層集合住宅の構造、室内被害や強震記録のシミュレーション等に関する公開研究フォーラムを開催し、その会場費、資料作成費等に充てる。
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