本研究の最終年度には,実環境下に暴露された防水材を原料とした再生樹脂シートについて,物性試験を行った。再生粉体の原料は,経年0,7,10,11年のシートを破砕して得て,経年数の違いによる影響を比較した。また,改修・解体工事から得られる経年シート自体の劣化状況が,再生樹脂シートの品質に影響を及ぼすことから,実環境下での防水シート(再生品ではなく,新品の防水シート)の長期的な劣化性状を把握した。再生塩ビ樹脂シートにおいて,塩ビ樹脂の劣化因子である熱,水,紫外線についてそれぞれ詳細な耐久性試験を行うとともに,それらを組み合わせた複合耐久性評価についても検討し,再生塩ビ樹脂シートの実環境を想定した耐久性評価を行った。さらに,耐久性向上を目的に,複層化した再生樹脂シートを製造し,その品質改善効果について検討を行った。これらの結果,次のことが分かった。 1)再生樹脂シートにおける耐久性は,廃材混入率が高くなると低下し,廃材原料種類によってその傾向は異なる。また,再生樹脂シートの耐久性は,廃材原料に含まれる熱安定剤や酸化防止剤等の添加剤に依存し,特に屋外で使用される防水シートを廃材原料として使用した場合,その耐久性は高くなる。 2)実環境下における防水シートは,複数の劣化因子から同時に影響を受けることから,引張強さは不規則な劣化挙動を示すが,伸び率は規則的に低下する。 3)廃材の使用経年数は,その原料を用いた際のリサイクルシートに強く影響を及ぼすが,廃材そのものの物性,つまり廃材の組成割合に強く依存する。 4)再生樹脂シートの長期的な耐久性は,表層に耐久性の高いヴァージンシートを用いた複層構造にすることで,JIS規格値を満たす耐久性を保ちながら,複層化再生塩ビ樹脂シート全体でのリサイクル率を高めることが可能である。
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