研究課題/領域番号 |
25420595
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
瀬古 繁喜 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (50507259)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コンクリート / 打込み欠陥 / 高周波静電容量 / 端子間隔 / 鉄筋 / セパレータ / 推定式 |
研究実績の概要 |
1、高周波電流を印加する接触端子(電極)の間隔を数種類に変えた高周波静電容量センサーがもつ平面的な測定範囲、および奥行き方向への測定範囲と測定感度に関する実験を行った昨年度の結果から、センサーの改良の必要性が生じたため、新たな仕様のセンサーを製作して測定を行うこととした。新たなセンサーでは、電極間の距離を15mmから65mmまで10mm間隔とし、電極の長さも25mmから100mmまで25mm間隔で設定した。また、ノイズ対策として、接続ケーブルの仕様等の改良を併せて行った。 2、昨年度、高周波静電容量センサーの平面的な測定範囲と感度および奥行き方向への測定範囲と感度に明確な傾向が得られなかった状況を踏まえて、再度確認実験を行った。実験の結果、電極間の距離が大きくなるのに比例して奥行き方向の測定可能範囲が大きくなることが分かった。電極間の距離を変えた方向では測定可能範囲は35mm以上の電極間の距離では変わらなかった。また、電極の長さを変えた場合には、電極が接触する面積が大きいほど測定可能範囲が大きくなることが分かった。 3、コンクリート等の中に空洞が存在する状態において、空洞に対する高周波静電容量センサーの測定範囲と感度を確認する実験を行った。実験の結果、電極間の距離が大きくなるのに比例して電極間の距離を変えた方向に空洞の測定可能範囲が大きくなることが分かった。奥行き方向では、電極間の距離を変えても測定可能範囲は変わらなかった。電極の長さを変えた場合には、空洞が電極に接触する面積よりも15mm程度大きい測定可能範囲が確認できた。これらの内容は、本研究の成果は2015年度日本建築学会大会(関東)学術講演梗概集への発表投稿を行った。 4、型枠中に充填したコンクリート中に存在する鉄筋の直径や位置、型枠の締付け金物等の影響に関する実験を計画した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、接触端子(電極)の間隔を変えた高周波静電容量センサーについて、昨年度の実験結果を踏まえて研究協力者とともに装置の仕様を改良して試作品を製作することができた。センサーの電極間の距離は、15mmから65まで10mm間隔で設定した。電極の大きさは、25mmから100mmまで25mm間隔で設定した。実験の結果、昨年度の問題点は解決され、測定範囲や感度に関する実験でも十分な測定結果が得られた。 2、電極の間隔を変えた高周波静電容量センサーを用いて、誘電率が異なる材料での、センサーがもつ平面的な測定範囲、および奥行き方向への測定範囲と測定感度に関する実験を行った。中実(モルタル等が充填された)状態の試験体では、電極間の距離が大きくなるのに比例して奥行き方向の測定範囲が大きくなることが分かった。電極間の距離を変える方向では、測定範囲は電極間の距離と関係がなかった。測定対象の誘電率によって奥行き方向の測定範囲が明確に異なる傾向はなかった。したがって、当初の目的であった、奥行き方向に異なる位置で存在する空洞は、電極間の距離を変えたセンサーを用いることによって、その位置を推定できるといえる。 3、誘電率が異なる材料での、空洞に対するセンサーの平面的な測定範囲、および奥行き方向への測定範囲と測定感度に関する実験を行った。電極間の距離が大きくなるのに比例して電極間と同じ方向の空洞の測定範囲が大きくなることが分かった。電極の長さを変えた場合では、電極長さに15mm程度を加えた範囲まで測定されていることが分かった。したがって、電極内の範囲で空洞が接しているかどうかが測定範囲の境界であるといえる。 4、高周波静電容量の測定値に影響を及ぼすと考えられる金属材料の影響について、鉄筋の直径や位置、締付け金物等の影響は、過去に実施している実験の状況を参考にして、試験体の大きさや鉄筋の仕様等の実験を計画した。
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今後の研究の推進方策 |
1、今年度得られた、仕様を改善した高周波静電容量センサーを用いて、型枠内部の要因としてコンクリートの調合・鉄筋(径)位置・セパレータ等を取り上げ、型枠材料の要因として材料のロット・湿潤状態等を取り上げ、外部の要因として、型枠の締付け金物・測定者等を取り上げた実験を行い、影響要因の効果を把握するとともに、その排除方法について、装置面・ソフト面の対策を立案していく。 2、空洞がコンクリート内部に存在する場合の、その大きさと位置の条件を変えた実験を行い、データを解析することによって、測定された高周波静電容量の値から空洞の大きさと位置を特定する推定式を導く。 3、実際的な大きさで開口部なども設置した模擬的な壁部材を製作し、コンクリートを打ち込んだ時点での測定を行うことによって実用性を確認していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(繰越額46万円)については、型枠へ打ち込んだコンクリート中に直径や配置の異なる鉄筋(誘電材料)が存在するときの影響評価、型枠の外側に存在する、締付け用の金属材料(セパレータ、鋼管などの誘電材料)による影響評価について、実験検討に対して十分に充当できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
1、次年度使用額(繰越額46万円)については、型枠中あるいは型枠外側に設置された金属材料(誘電材料)の影響を評価してその影響を除外する方策を立案する検討へ費用の充当を行とともに、より実際に即した状況での空洞判別の精度を確認するため、実際的な大きさの模擬部材を製作してコンクリートを打込みながら測定を行う実験での部材製作費用等に充当して活用していく。 2、ほかには、当初計画していた研究費の使用計画から大きな変更はなく、成果の対外発表も併せて予算の執行を行っていく予定である。
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