研究課題/領域番号 |
25420597
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
中村 成春 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (50282380)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラスチック収縮ひび割れ / 画像分析 / 水分拡散解析 / モルタル |
研究概要 |
品確法施行や国際規格化の動向に派生してRC造建築物の各種性能表示が重要視されている現在,長期的に建物的健全かつ人的健康を保ったRC造建築物の維持管理技術に関する評価手法の確立が望まれている。 本研究は,サスティナブルなRC造建築物の実現に向けて,プラスチック収縮ひび割れ,アルカリシリカ反応による網目状ひび割れ,凍害に生じる網目状ひび割れの現象に着目し,実際の網目状ひび割れを,ひび割れ抽出システムの活用により分析し,様々な環境条件下における網目状ひび割れパターンの大きさとひび割れ幅の関係を明らかにすることを目的としている。 平成25年度は,プラスチック収縮ひび割れによる網目状ひび割れについて,実験により,若材齢時の平板を作製し,試験体に網目状ひび割れを発生させ,網目状ひび割れパターンの大きさやひび割れ幅を実測し,試験体の表面性状を検討した。 その結果,ブリーディングによる表面水が蒸発してからでないと,助成金で購入したデジタル画像相関法を用いた画像分析装置によるひび割れ発生に至る歪み等の表面性状が解析できないことがわかった。このため,プラスチック収縮ひび割れ実験とは別に,モルタルやコンクリートの水分蒸発に関する水分拡散解析手法を検討し,日本コンクリート工学会の査読論文としてまとめた。 また,モルタル試験体によるプラスチック収縮ひび割れ実験においては,ブリーディング水蒸発後からの画像分析より,ひび割れ発生前兆の歪みを捉えることができたことと,砂混入率を変えた結果から,砂は,ひび割れ発生させやすい拘束体の役割にあることがわかった。これらの結果は,日本建築学会学術講演会や日本学術会議材料工学連合講演会の研究口頭発表としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は,プラスチック収縮ひび割れ発生実験を繰り返し実施したが,鉄筋拘束などをかけていないので,網目状ひび割れを発生させることが思うようにいかず,実験時間をかなり費やすことになった。 また,助成金で購入したデジタル画像相関法を用いた画像分析装置は,フレッシュモルタルから凝結して硬化モルタルの相変化中で生じるひび割れ発生やひび割れ発生の前兆となる歪みを捉えることを目的に適用したが,フレッシュモルタル時のブリーディング水があると解析できないことがわかり,その画像分析の方法論を考えることにも時間を費やした。 さらに,ブリーディング水蒸発がプラスチック収縮ひび割れ発生に関係することがわかり,当初,想定していなかった水分蒸発に関する水分拡散解析手法を検討した。 現在,水分拡散解析手法は完成して,日本コンクリート工学会に査読論文をまとめることができた。また,プラスチック収縮ひび割れ実験でのひび割れ発生に関する画像分析も解析でき,日本建築学会学術講演会や日本学術会議材料工学連合講演会の研究口頭発表としてまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画の予定に従って,平成26年度は,アルカリシリカ反応による網目状ひび割れを対象に研究を推進していく。アルカリシリカ反応のひび割れ発生原因となる膨張ひずみについて,骨材粒子とアルカリ水溶液の一次反応から反応度を解析し,その反応度から膨張ひずみに換算する解析手法の基本形は作製しており,今後,反応度から膨張ひずみ換算の諸係数を具体的に検討していくことになる。 また,平成25年度で対応できなかったプラスチック収縮ひび割れを対象とした網目状ひび割れ解析手法の検討を進めていく。平成25年度のプラスチック収縮ひび割れ発生実験の結果から,試験体作製にあたっての打込み時の材料不均質性が,ひび割れ発生させる拘束体を形成している手がかりが得られた。この手がかりを具体的に検討していくことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究内定後に,研究費が申請額より減額されていたため,研究に必要な実験備品の購入の再検討にあたって,平成25年度の助成費用のほとんどが備品購入費用になった。そのため,実験消耗品を,別の研究費で対応することとしたため,残金が生じた。 平成25年度に助成を受けた研究費の残金は,平成26年度に高額備品を購入する予定がないため,平成26年度実施する実験等の消耗品に充当する。平成26年度の研究については,アルカリシリカ反応に対する網目状ひび割れを研究対象とするが,ひび割れ発生に至るまでの実験自体,長期間の実験になるため,途中経過で失敗の様相が現れた場合,やり直しの時間を確保することが難しい。このため,平成26年度に助成を受ける研究費については,実験の一部を,試験設備が整っている学外のレディーミクストコンクリート工場等で実施する予定であり,その実験関係諸費用に充当する。
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