研究課題/領域番号 |
25420600
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
東 康二 崇城大学, 工学部, 教授 (80320414)
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研究分担者 |
岩下 勉 有明工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (10332090)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脆性破壊 / 延性き裂 / 溶接欠陥 / 破壊靱性 / 塑性拘束 / 機械切欠き / 有限要素解析 / 破壊評価 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は,鋼構造建物の溶接接合部における脆性破壊を予測するための欠陥の評価基準の策定である.本研究では,欠陥形状・寸法と延性亀裂進展量の関係を調べるために,通しダイアフラム形式柱梁接合部を単純化した試験体を用いて,欠陥から進展した延性亀裂を起因とする脆性破壊の再現実験を行った.梁フランジ開先面上に銅版を貼付して本溶接を行うことにより溶接始終端部角部に表面欠陥を挿入した試験体を製作した他,ワイヤーカットによる機械切欠きを挿入した試験体を製作した.本実験と同時に有限要素解析によりToughness Scaling Model(TSM)手法の有効性を検討した.その結果,塑性拘束が比較的高い場合は破壊を的確に予測できることが示された一方,TSMの応用のみでは塑性拘束を考慮できず評価にばらつきが出る場合があることも示唆された.即ち,き裂先端の鋭敏性により評価結果が異なり,鈍化したき裂(き裂先端半径0.15mm)の破壊予測では安全側過ぎる評価を与える結果となった.そこで,これまでの材料靱性試験レベルの検討で有効と見られたWeibull応力を,塑性拘束を考慮するパラメータとして導入し,その有効性について本実験に適用して検討を行った.その結果,先端が鋭敏なき裂についてはTSM同様,精度の高い予測を行うことができることが明らかとなった.先端が鈍化したき裂に対しては,脆性破壊発生頻度を表すパラメータ(m値)の特定が困難であり,破壊評価は十分な精度に達することができず,更なる破壊靱性試験が必要であることも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脆性破壊の評価手法の検討に関わる試験体7体の内,機械切欠きを挿入した4体の正負交番繰返し載荷実験を行った.実験温度は昨年度と同一の-20℃とした.本実験と並行して,鋭敏なき裂を想定した疲労き裂を挿入した試験片18体と機械切欠き(き裂先端半径0.15mm)を持つ試験片18体の計36体について3点曲げ試験により材料の破壊靱性Jcおよび限界Weibull応力を求めるための破壊頻度パラメータを求めた.前者は前年度計画分であったが,後者まで一連の試験を実施することにより,それぞれの場合における破壊評価を行うことができ,平成26年度計画を完了した.ただし,機械切欠きを挿入した試験体では脆性破壊発生に大きなばらつきが生じており,更なる破壊靱性試験を行う必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
本実験,破壊靱性試験および有限要素解析により,溶接接合部に存在する欠陥から発生する脆性破壊の破壊評価において複数のパラメータ(Toughness Scaling Model,Weibull応力)を用いて,その精度を検証した.現状では鋼構造建築物で最も使用頻度の高い通しダイアフラム形式接合部の破壊評価を行っているが,実構造体の接合形式,溶接方法は様々にあり,そこに内在する欠陥は多種多様であり,まだ未解明の部分が多い.今後,様々なき裂先端形状と延性亀裂進展状況について検討することで,より精度の高い評価が可能となり,大地震時の脆性破壊防止ガイドラインの作成へと道が開けると確信する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度予算では,汎用有限要素プログラムのライセンス料と,追加分の試験体および破壊靱性試験片の製作,国際会議にかかる費用を計上していた.各費用はおおよそ計上した通りであったが,本年度の研究の結果,更なる破壊靱性試験が必要であることが明らかとなっており,その製作本数を確保する為,次年度に繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り,次年度使用額と平成27年度予算とを組み合わせて,破壊靱性試験片の製作を行う.
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