研究課題/領域番号 |
25420609
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小金井 真 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (60555738)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 衝突噴流 / 地中熱交換器 / 地中熱換気システム / バイパスファクタ / 自然エネルギー |
研究概要 |
本研究の目的は住宅用地中熱換気システムに使われている地中熱採熱パイプに衝突噴流を用いることにより、熱交換性能を高め、冷却能力の向上を目指すことである。25年度は、小型試験装置によって多孔板吹き出しによる衝突噴流の特性を把握した。小型噴流吹付装置(吹付部の大きさ:1000×600)を試作し、厚さの異なる3種類の多孔板(厚さ:1 mm、5 mm、10 mm)を用いて実験を行った。衝突噴流熱伝達の場合、吹付距離が孔径の4~6倍の時、よどみ点において最大の熱伝達係数が得られるとされているため、吹付距離を孔径5 mm×4 =20 mmに設定した。吹出風速は衝突噴流熱伝達でよく用いられる10 m/s程度とし、既存の地中熱採熱パイプで使われている風量と吹付部として確保できる面積とから孔ピッチを決めた。すなわち、孔ピッチ、穴径は文献に基づいて最適値を設定することによりパラメータから除外し、今回最も重要なパラメータとなる多孔板厚さを主パラメータとした。 実験の結果、多孔板吹き出しによる衝突噴流で得られる平均熱伝達係数は、多孔板の厚さによらずほぼ一定値となることが分かった。従って、多孔板厚さが吹き出し気流性状に与える影響は小さいものと考えられる。今後実機に適用する際に、多孔板厚さを気にせずに設計が出来ることになる。 また、従来の地中熱採熱パイプを用いた場合に比して多孔板による衝突噴流では、平均熱伝達係数が1.5~2倍程度となったが、ノズルから吹き出した理想的な2次元平板垂直衝突噴流の平均熱伝達係数(Gardonらの式より算出)の30%程度に留まることが分かった。これはノズルから吹き出した理想的な2次元平板垂直衝突噴流に比べて多孔板吹き出しの場合は吹き出し気流が拡散しやすいこと及び衝突後の空気の逃げ道が少なく、混合してしまうことが原因と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、25年度の主目的であった多孔板厚さが熱伝達係数に及ぼす影響を明らかにすることが出来た。最適な孔径と孔ピッチについては、文献値および実機に適用する場合の制約条件から決定し、パラメータから除外することによって、実験時間の短縮を図った。なお、(当初の計画には含まれていないが)多孔板厚さによって吹き出し気流性状が変わらないことを気流可視化装置によって確認することを試みたが、煙の混合が多く、気流性状の違いを確認するには至らなかった。計画書記載の25年度実施内容は概ね達成できたものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
上述のように、従来の地中熱採熱パイプを用いた場合に比して高い熱伝達係数が得られたものの、ノズルから吹き出した理想的な2次元平板垂直衝突噴流の平均熱伝達係数には及ばなかった。これは多孔板吹き出しの気流が拡散しやすいこと及び衝突後の空気の逃げ道が少なく、混合してしまうことが主な原因と考えられる。多孔板吹き出しの気流性状の変更は難しいと考えられるため、今後は後者の解決策を検討したい。26年度は計画書に記載の通り、空気の逃げ道の確保のために多孔板にめくら部を設けた地中熱採熱パイプの実機を用いた実験によって、衝突後の気流の逃げ道の有無の影響を調べ、熱交換性能の向上を目指す。 また、シミュレーションにより衝突噴流パイプの熱交換性能を把握する。小型試験では実施できなかった吹き出し部長さの影響や一定期間運転時の熱交換性能等を調べる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
小型試験機の製作費(外注費)が当初予想額をかなり上回ったため、当初購入を予定していたデータロガーは購入せずに、学内の他の研究室より借用した。このため、トータルで残額が生じることになった。 残額は、次年度に製作予定の噴流吹出内管試作費の一部に充てる予定である。
|